お国柄がにじみ出る世界の子育て事情を、各地に住むライターのリレーでリポートしていくこの連載。今回はカナダの子育て事情について、トロントに住む久保恵一さんに伝えてもらいます。

大自然とAIと多様性の国「カナダ」

 皆さんは「カナダ」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか? メープルシロップや、カナディアンロッキーに代表されるような豊かな自然を思い浮かべる方が多いかと思います。世界で2番目に広い国土を持ち(日本の面積の約26倍)、人口は約3700万人と日本の約1/3の国です。私の住むカナダ最大の都市トロントは、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに次いで、北米で第4位の人口を誇る大きな街ですが、街中には豊かな自然が溢れています。それと同時に、トロントは先日、SamsungがAIセンターを設立することを発表したり、Amazonの第二本社の候補地となったりするなど、世界でトップクラスのAI人材が集まるテクノロジーの街でもあります。

 カナダは人種構成的には、約7割をヨーロッパからの白人系移民が占めていますが、毎年人口の約1% に当たる約30万人を移民として受け入れており、西海外の都市バンクーバーでは人口の約13%が、また、トロントでは人口の約7% が中国語を話す、といわれています。「人種のるつぼ」であるアメリカは、移住したらアメリカ人になることを求められるが、「人種のモザイク」であるカナダでは、移民が各自の文化や宗教をそのまま持ち込んで生活しており、自分の生まれ育った国の文化を尊重しながら生活できる多文化主義(Multiculturalism)の国だ――とよくいわれています。

トロントでは北米最大級のLGBTQの祭典 プライドパレードが行われます
トロントでは北米最大級のLGBTQの祭典 プライドパレードが行われます

 多文化主義を国の方針として掲げているカナダは、同時に、ダイバーシティ(Diversity、多様性)とインクルージョン(Inclusion、多様性の受け入れ)の国でもあります。インクルージョンの一例としては、日本でもイケメンとして知名度の高いジャスティン・トルドー首相が、2015年の首相就任後に組閣した内閣では、男女15人ずつの閣僚を起用し、先住民の血を引く大臣や、アフガニスタン難民の閣僚がいたり、さらにゲイであることを公言している議員が大蔵大臣に任命されました。閣僚の人選理由を問われたトルドー首相は「Because it’s 2015 (それは2015年だからですよ)」と回答したことも、カナダ人の価値観をよく表しており、多文化主義、ダイバーシティ、そしてインクルージョンは、カナダ人が誇りとしている価値観の代表と言えると思います。