教科の垣根を越えたような授業

 そんな価値観を持つカナダの学校では、どのような教育が行われているのでしょうか?

プレスクールの授業の一コマ。様々な人種の子どもがクラスメートです
プレスクールの授業の一コマ。様々な人種の子どもがクラスメートです

 義務教育は6歳から16歳までとなっており、連邦立憲君主制国家であるカナダでは各州で独自の指導要綱が定められ、先生が独自に教材を用意し、授業内容を各先生の判断で決められます。そのため、各校共通の教科書に沿って授業が進む、ということはあまりなく、教科の垣根を越えたような自由な発想の授業もたくさんあります。例えば、私の子どもが小学生のときに受けた理科の授業では、学校の屋上から卵を落としても割れない装置をグループで開発し、その装置を製作する、という内容でしたが、その装置を売るとすれば、どんな内容のテレビCMが良いのかを考え、実際に携帯電話やiPadなどで撮影してプレゼンテーションを行う、といった社会科や国語の範囲までもが授業内容となっていました。

 また、まずは問題が与えられ、その問題に対応する答えを学習する、という日本で一般的な授業よりも、カナダでは、先生からはテーマのみを与えられ、子どもたちがグループディスカッションを通して、テーマに対しての理解を深める、という授業スタイルも多いと感じます。例えば小学校の音楽の授業では、「モーツァルトとベートーベンのどっちが不幸か?」という日本では考えられないようなテーマが先生から与えられ、まずは生徒たちがモーツァルトとベートーベンの音楽をクラスで聴き比べします。それぞれの音楽から何を感じ取ったのか意見を出し合い、その後、モーツァルトとベートーベンがどんな人生を送って、音楽的にどんな特徴があるのか、作曲の背景やどんな思いが込められているのかを、グループに分かれて調べます。最後にはクラスをモーツァルトとベートーベンの2チームに分け、自分たちの意見をパワーポイントに(!)まとめて、プレゼンテーションしました。

 上記のように、先生独自の指導内容による授業が多い、ということは、当然、良くない先生が担任になると1年間、不満足な思いをする、ということでもあり、わが子の経験では、先生が自分の得意分野以外の授業になると、TEDの動画を見せてディスカッションばかり、ということもあるようです(これはこれで良い気もしますが…)。

子どもの良いところは徹底的に伸ばす教育

 また、カナダの学校システムで私が気に入っていることの一つに、子どもの良いところは徹底的に伸ばす、という仕組みがあることです。あまり一般化し過ぎてもよくありませんが、私は日本の教育は、その子どもの強みを伸ばすというよりも、不得手なことをなくして平均点を高くする、という側面が強いと思うのですが、先述の通り、ダイバーシティ、そして、インクルージョンの国であるカナダでは、他人が持つことのできないその子どもの強みや個性を伸ばすことに注力しています。

ロボットに関心のある長男が参加したRoboticsの大会
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