親にとっては他の狙いもある。キンダー(幼稚園の年長)と小学1年生の2学年が通う、イーストチェスター地区のウェイバリー・スクールの校長、マリー・ドイルさんは、生徒の親から「子どもが1通もクラスメイトからバースデーパーティーの招待状をもらっていないのだけど、大丈夫だろうか」という問い合わせを受けた。「多くの親は学校生活が本格的に始まる中で、わが子がクラスメイトと社交的に関わることができているのか、という点にすごく神経質になっている。パーティーに招待されるというのは1つの社交性のバロメーターにもなっている」とドイルさんは指摘する。

 バースデーパーティーは、年齢が低い場合、パーティー中も親が会場に残るケースがほとんどだ。その間にクラスメイトの親と話して、その家の家庭環境を知る良い機会であると同時に、パーティーで自分の子どもが集団の中でどのように振る舞うのか、他の子との違いを客観的に知るチャンスでもある。また、自分が主催する場合、来る人数、来るメンバーによってわが子がどれだけクラスになじんでいるか把握できる面もある。働く親が増え、放課後に公園に集まって世間話をしながら子どもたちの関わりを見るような時間的な余裕のある家庭は少ない。そういう意味でバースデーパーティーは貴重な機会だ。

パーティーグッズ店にはパーティーで飾るバルーンの見本が壁一面に。値段も高めだ
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 息子のクラスメイトのメイソン君の母親のタラさんは「小学校に上がるとクラス内でポピュラー(人気)な子を中心としたグループが出来上がるの。自分の子どもがそこに入れるか、入れなくてもクラスでどのような位置づけなのかとても気になる。私だけでなく母親はみな気になっているはずよ」と話す。米国社会は社交性が重視され、どんな相手や状況でもフレンドリーに話せる人は一目置かれる。学校において自分がどのグループに属していたかという点が将来の自己肯定感につながる面もあるようだ。個人主義の米国人だが、わが子のことになると、早い段階からクラス内での序列意識のようなものを気にしている。米国におけるバースデーパーティーは、誕生日を一緒に祝うという単純な仕掛けだけではなく、親がわが子の社交性を確認し、磨く場として重要な役割を担っているといえそうだ。

(取材・文/坂下曜子)