“見守られている”という安心感を与えるために

── 子どもが小学生になると、行動範囲が広がるなかで、地域とのつながりを自ら持つようにしなければいけないと感じることも増えると思いますが。

 小学生になると行動範囲は保育園に通っていたときよりもイッキに広がります。よく言われる子育ての鉄則「子育て四訓」では、「少年は手を離せ、目を離すな」ですから。

 一番年下の息子が、自転車に乗れるようになったころにどこまで遊びに行ったのか聞いたら、今まで越えたことのない大通りより先まで遊びに行っていたので驚いたことがありました。でも、思い返せば自分が子どものころだってそうだったわけですよね。

 ただ、子どもというのは、見守られているという安心感があるからこそ、行動範囲を広げていくことができる。ちゃんとわが子のことを、いつでも“見ている”という安心感を親は与えてあげないといけません。しかし、それは親だけでは難しい。そこには、地域の目も必要になるわけです。

 ウチの息子の場合など、地域のママ友が「安藤パパ、息子くんがコンビニで変な雑誌読んでましたよ!」とか、「近所のお宅でピンポンダッシュしてましたよ!」なんて、笑いながら教えてくれることがよくあります。そんな情報まで入ってくるのですから、安心ですよね(笑)。

 こんな感じで、地域活動に積極的に関わっていれば、親はもちろんのこと、子どもの顔も覚えてもらって、見守ってもらえる。そういう意味では、誰が隣に住んでいるのかさえ分からないマンション住まいの人たちにはオススメしたいと思います。

子育ては“仕事化”してはいけない

── 最後に、仕事も家庭もうまくいくようにしたいと思っているパパたちに向けて、メッセージをお願いします。

 FJが10周年を迎えてみて、今の日本のパパたちは、10年前と比べるといい方向に向かっていると思います。それぞれの意識や、家族への思いをこのままキープしつつ、「笑ってる父親」を目指していってほしいですね。そのためには、自身が所属している会社でも取り組んでいる働き方改革にしっかりとコミットしていって、職場を変えていってほしい。

 繰り返しますが、働き方改革は、結局は生き方改革ですから。働き方改革によってできた時間を子育てや地域活動に使う。そういったポジティブなプランニングをしていってくださいということが一番のメッセージです。

 ただ、その一方で、心配事もあります。それは、子育てに熱心なパパが増えたというのはいいことなのですが、その半面、子どもにとって過干渉する「毒親」になってしまっているパパも増えているということ。子どもの自立性をそいでしまうようなことばかりしないで、子どもの人生は子どものものだという意識をちゃんと持っていただきたいですね。そのために必要なことは、子どもの話をよく聞いて、子どもが必要としているリソースを提供すること。それが、親として一番、大事な役目だと思います。

 子育てに熱心なパパが陥りがちなのは、子育てを“仕事化”してしまうことです。仕事と言えば、業績が大事で常に結果を求められるのですが、それが子育てで言えば、子どもの成績だったり、合格した学校だったりになってしまうわけです。これは、今までは教育熱心なママが陥りがちだったワナなのですが、それがパパのなかでも見受けられるようになってきたのではないかと感じます。

 成績どうのこうのよりも、子どもをいかに葛藤させて成長させるか。そこが大事なことだと僕は思います。もちろん、そのためには、パパ本人が1人で完結させるのではなく、ママと一緒に、あるいは地域のいろんなパパ友とみんなで育てていくという感覚になるといいのではないでしょうか。