MBAよりマネジメント力を磨けるPTA会長

── 地域活動にはPTAやおやじの会、自治体などがあると思いますが、そういったところでパパが活動することによるメリットとしては、他にも何かありますか?

 日本の場合、地域活動に参加する男性が少なくなったことで母性化しているとも言われています。もっと積極的に地域にパパが入ることによって、その地域の安全性が高まるということも大きいのではないでしょうか。さらに、今言ったように、パパたちがイベントやキャンプをやったりすると子どもの居場所も増えますし、斜めの関係も経験できます。しかも、パパ自身も自分の住む地域にいろんな年代のパパ友ができるので、老後に楽しい暮らしが送れるようになる。僕から言わせると、パパが地域活動することはメリットしかないと思います。

 起業を目指しているパパだと、高度なマネジメント力を身に付けようとMBA取得を目指す人もいると思いますが、それだったらPTA会長をやったほうが、よっぽどマネジメントだとか経営学が学べると思いますね。FJには現在、PTA会長をしている会員が40人くらいいますが、「会社で仕事しているほうがよっぽど楽だった」と言うほど大変です。でも、そこでマネジメント力を磨くという意味ではMBAにも負けないものであると僕は思っています。

── PTA活動などは、煩わしいのではないかと思ってしまいますが、積極的に関わっていこうという姿勢が大事なのでしょうか?

 やはり、多くの人は、地域活動に関わった先のいろんな面倒臭さをどうしても想像してしまいます。でも、それが自分の世界を広げたり、様々な課題解決能力を身に付けたりするチャンスであって、それを仕事にも生かせるモノだとポジティブに考えるといいのではないでしょうか。家事をする時間をブレインワークの時間だとポジティブに捉える話と一緒ですよね。

 もちろん、地域活動に積極的に参加するというのは大変です。僕が小学校のPTA会長を務めたときには、学校の統廃合問題で揺れていて、それを阻止するために50回くらい会議をしましたから。すべてプライベートの時間なのですが、それをやったおかげで統廃合計画を行政側に白紙撤回させることができました。今では、その小学校は人気の小学校になって、児童数も増えています。わが子たちが通っていた小学校が今も続いているので、あのとき頑張って良かったなあと思っています。

 そのときの活動が、僕の今のNPOでの活動につながっているんですよ。地域社会を守るだとか、子どもたちの居場所を増やすとか。あのときの経験が、僕の今の活動に生きている。これは、他ではなかなかできない、とても貴重な経験でした。よく言うのは、「パパにとって、地域参画は留学みたいなものだ」ということです。すべてが、自己成長につながります。

 例えば自分の子どもが留学するとなったら、あれこれリスクを考えてしまって心配したりもするのでしょうけれど、留学して戻ってきたときに成長していたら、良かったと思うでしょう。それと同じです。要は、習うより慣れよ、ですね。

 昨今は何でもリスクヘッジ社会になってしまっていて、親は何でも事前に情報を調べて、「やっぱりダメだ」となってしまいがちですが、「命を取られるような危険がないのであれば、どんどん前向きにやるべきだ」と僕は思います。

 だから、FJの会員には、強くPTA会長に立候補することを勧めるんです。「会長の座にただ座っているだけじゃなくて、改革もしないとダメだよ」とハッパを掛けつつ、「それで失敗したらオレが骨を拾ってやるからな!」って(笑)。ほとんどが大企業に勤めている優秀なパパたちで忙しい毎日だと思いますが、それでも自己成長できる留学だと捉えて、みんな頑張っています。