僕らが子どものころには、「群れ遊び」が当たり前で、地域で暮らす親も自営業だったり農家だったりする人が多く、子どもたちが何かやらかすと叱り飛ばしたりしていた。しかし、今は核家族化やマンション住まいの子どもが増えたことで、地域であるとかコミュニティーといったものが失われつつある。ですから、あえて地域活動に参加するパパ友同士で、自分の子どもではない子どもと接する機会をつくってあげることは、とても重要です。

 このような関係を“斜めの関係”と言うのですが、昔は縦でも横でもない、斜めの人間関係というものがあって、それが子どもの成長に大きな役割を果たしていたと思います。寅さんで言えば、寅さんの義弟に前田吟さん演ずる博がいて、その息子に満男がいますよね。その満男にとっては伯父さんで、重要な斜めの関係となるのが寅さんです。パパである博はマジメな印刷工で、寅さんはそれとは真逆の生き方をしている。親とは違う存在の大人を子どもが知ることも大事なんです。

 例えば、ママは良妻賢母型の人生なんだけれども、ママの妹、つまり、子どもにとっての叔母はキャリアバリバリで働いていて結婚はしていないとか。全く違う生き方をしている2人の女性を見ることで、子どもは葛藤することができる。要するに、自分の親が「これをやっておけば大丈夫」と言っても、「でも、こっちのほうが楽しそうな生き方をしているかも?」と思うことが大事。成長していくなかで、最終的に「自分はどっちの生き方をするんだ?」と葛藤することができますよね。いろんな大人を知るというのは、子どもの成長にとっていいことだと思います。

自分の親以外のことを知るのは大事なこと

 一番、子どもの成長にとって良くないのは、夫婦そろって同じ教育方針になってしまうこと。よく、夫婦で教育方針についてコンセンサスを得ておいたほうがいいなどと言う人もいますが、僕は逆だと思います。なぜなら、教育方針が同じだと、それが完全に既定路線となって決まってしまう。すると、子どもは親の期待に応えようとするしかなくなって、言いなりになるしかありません。これって、考えてみれば怖いことですよね。そうやって育った子どもが大人になって何かでコケたとき、親のせいにするようになったら厄介ですからね。

 若者たちに話を聞いていると、「私は親に支配されて育った」と言う若者が多いんです。そういうリスクを回避するためにも、やはり、斜めの関係をつくる機会を子どもに多く与えておくことが大事だと思います。

 そういった考えから、僕の場合は小学校でPTA会長になったときに、おやじの会と同じような組織「パパ会」を作って、みんなでキャンプだとかスキーだとかに行くという企画を立てました。その間、ほとんどのママは同行しないで、子育てはお休みしていました。

 FJでも、年に1回、父子合宿をやります。そのルールが、自分の子どもとは同じ部屋で寝ないというもの。他の子どもと一緒に過ごすようにしています。他の子どもと風呂に入り、本の読み聞かせをしたり。そうすると、パパも子どもも新鮮な体験をする。「ウチの子はこの本は嫌いなのに、この子は好きなんだな」と。子どものほうも、「ウチのパパはこんなことするとダメって言うのに、このパパはダメって言わないんだ」とか。その違いを知るということがとても大事なんですね。兄弟がいない子どもたちの場合には、異年齢での縦の関係を学ぶことができます。