起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなど、多くの壁を乗り越えてきたママ起業家や社長にインタビューする「私が壁を乗り越えたとき」。第12回は、シニアミセス向けの服を製造・販売している株式会社マダムトモコの代表取締役、武石麗子さんを紹介します。

 武石さんは、2人の男の子を育てる専業主婦でしたが、腰や背中が曲がった祖母のために母が洋服を作ったことをきっかけに、2003年9月に『背の丸い人の上衣』で特許を出願し、事業をスタート。2004年3月に『腰の曲がった人のズボン』で特許を出願し、同年12月に法人化。創業以来、年を重ねてスタイルが変わっても、キレイにおしゃれをして女性として毎日を楽しんでほしいという気持ちで商品開発を続けています。

 前編の「腰が曲がってもオシャレな服を 専業主婦から起業」に続き、今回は起業してから取り組んできたことや、子育てと社長業との両立について紹介します。

2004年“成り行き”で法人化。在宅でできる範囲で行う

 2004年12月、有限会社マダムトモコを設立。最初は、母にパターンを作ってもらって、生地を一緒に選びながら、洋服を作り始めました。

 「特許を取得したのですが、誰も買い取ってくれませんでした。それなら、ちょっとだけ洋服を作ってみようかなと思って作り始めたら、少し売れたんです。そうしたら、流通の人に『うちで売ってみないか、ただし、うちと取引するなら法人化しないとダメだよ』と言われて法人化しました。そのため、会社を作るぞ、という感じではなく、成り行きでした」

 初めは、インターネットで週に1枚売れるかどうかという程度だったといいます。

 「当時は夫の扶養だったので、とくに焦りもなく2~3年はのんびりやっていました。下の子を保育園に入れたかったのですが、自営業だったのでかなり不利な状況。しばらくは在宅でできる範囲で続けていました。下の子が3歳になってようやく保育園に入ることができました。何年か経つと収入がてきてきたので、夫の保証がなくてクレジットカードを作ることができ、そのとき一人前になったと思いましたね」

 「もともと専業主婦だったので、どうやって洋服を作るかも分からないし、どうやって企画書を作るかも分からない。何も分からないところからスタートしました。小売りの流れくらいしか知らず、BtoBがどういう仕組みで行われているかなど、商売の仕組み自体もよく分かっていませんでした。何も知らないからできたのかもしれません」

武石麗子
株式会社マダムトモコ代表取締役社長
短大卒業後、大手広告代理店に勤務。妊娠を機に退職。加齢により背中が丸くなり、普通の服が着にくくなった祖母のために、実母が手作りした洋服をもっと多くの人に使ってもらおうと、2004年有限会社マダムトモコを設立。『背の丸い人の上衣』(特許 3632704 号)、『腰の曲がった人のズボン』(特許 3673872 号)を出願。2008年に桜新町マダムトモコサロンを開設。2010年に株式会社に改変。