時間を持て余して参加した起業セミナーで、事業プランを構築

 2014年、初めて専業主婦になった錢谷さんは、夫に勧められ、半年間の起業セミナーに参加しました。

 「家事をするのは好きなほうなので、初めのうちは楽しかったのですが、次第に時間を持て余すようになりました。見かねた夫から、何か勉強しに行ったらどうかと言われ、夫の同級生である経営コンサルタントの神田昌典さんが主催する起業セミナーに通うことにしたのです」

 最初は自分で起業しようというつもりは全くなく、軽い気持ちで受講していたものの、次第に、具体的な事業プランを考えるようになったといいます。

 子どものころから「せっかく助かった命を生かして、世の中の役に立ちたい」と考えていた錢谷さん。自然と、世の中の課題を解決する方向に頭が働きました。

 「自分自身が子育てをする中で一番大変だったのは、保育園からの急な呼び出し。特に出張ばかりしていた時期は、園から呼び出されてもすぐにお迎えに行くことができませんでした。一方で、大学院で一緒に学んでいた看護師さんたちのことも気になっていました。彼女たちの大半は、大学院で学んだ後に病院に勤務しましたが、出産後は育児との両立を断念して辞めていく方も多かった。復職したいという気持ちはあっても、『一度辞めてブランクができてしまうと、仕事を再開するのが怖い』『夜勤は厳しい』など、復職までのハードルは高いと聞いていたのです」

 この2つの課題を同時に解決する方法として、生まれたのが「うちナース」の事業コンセプト。「“うち(家)にいるナースが社会のために力を使える場を作る」というコンセプトのもと、事業プランが固まっていきました。

 「下編」では、錢谷さんが起業後、どんな変遷を経て事業を軌道に乗せていったのかを紹介。子どもの教育に関する錢谷さんのユニークな考え方などについてもお伝えします。

(取材・文/平野由紀子、イメージ写真/iStock)