「息子をこんなに泣かせてまで仕事をする意味があるのか」

 その後、国立がん研究センター勤務を経て、2013年に製薬会社に転職。抗がん剤担当MR(医薬情報担当者)に対し、研修の講師役として薬やがんについての専門知識を教える任務に就きました。

 「育児との両立が無理なくできると考えて選んだ転職先でしたが、途中から、全部署の社員に向けて統計学を教える研修を行うことになりました。そのため、全国の拠点を回らなければいけなくなってしまい…。

 おかげで社長賞を頂いたのですが、そもそも、こんなに仕事をするはずじゃなかったと(笑)。長時間労働で、泊まりがけの仕事も多かった。その頃は再婚していたので、保育園のお迎えは夫に頼むことが多かったのですが、当時、4歳だった息子に『みんなお母さんが迎えにくるのに、うちだけ、どうしてお母さんがこないの』と、ものすごく泣かれてしまい…。そのとき、息子をこんなに泣かせてまで仕事をする意味があるのかな、とふと思ったんです。どんなにたくさんお給料をもらおうが、子どもといる時間がゼロになったら何になるんだろう、私はお母さんなのに、と思ったらいてもたってもいられず、仕事を辞めることを決意しました」

 ちなみに、子どもたちの「2代目お父さん」となった現在の夫は、錢谷さんとは15歳離れた「年の差」婚。国立がん研究センターに勤務していた時期に出会いました。

「2代目お父さん」を3歳息子がスカウト

 「そもそも、夫を2代目お父さんに『スカウト』したのは、3歳だった息子でした。当時、勤務先に常駐する業者さんだった夫が、雑談の中で、『子ども連れで水族館に遊びにいってみたい』というので、『じゃあ、うちの子どもたちと一緒に行きますか』となり、みんなで江の島の水族館へ。その時に、普段、ほかの大人にあまりなつかない息子が、夫に抱っこしてもらって、うれしそうに『おとうさん…』と言ったことがきっかけとなり、再婚に至りました。そんな経緯から出発しているので、今も、子どもたちと夫はとても自然な関係が保てています。特に長女とは、実の親子のように本気で親子ゲンカをするくらいです

勤務先に常駐する業者さんだった男性と再婚。「2代目お父さん」にスカウトしたのは3歳だった息子だった(写真はイメージ)
勤務先に常駐する業者さんだった男性と再婚。「2代目お父さん」にスカウトしたのは3歳だった息子だった(写真はイメージ)