ベビーカーで取引先へ

 創業期でお金もままならない中、高い託児所代を払うのは大変だったといいます。

 「ローソンにサンプルを届けに行くときなど、娘を連れていけるときはベビーカーで会社まで行っていました。さすがに商売相手の会社のエレベーターには乗りづらく、『すみません、下に着きました』と連絡して、取りに来てもらっていました」

 「一時保育に預けるときは、キックボードで移動していました。託児所は1時間当たりの料金で、5分過ぎたら延長など、とにかく高いので、歩いて移動する時間が本当に無駄。キックボードなら畳んで地下鉄に乗れるし、バスにも乗れるから、最大の時短になるんです。託児所に連れていった後は、駅までキックボードで行き、畳んで電車に乗る。降りてから倉庫まではまたキックボードで行く、という感じでした。実は今でも愛用しています(笑)」

娘や母と過ごす時間も大切にしている
娘や母と過ごす時間も大切にしている

ココナッツオイルを輸入し販売。一大ブームに

 2013年に株式会社化し、アジア最大級の食品・飲料専門展示会「フーデックス」に出展。そのときにデビューした商品が「有機エキストラバージンココナッツオイル」でした。

 「もともと作っていたクッキーに、バターの代わりにココナッツオイルを使っていました。創業当初は、気に入ったココナッツオイルをアメリカから個人輸入していました。調べると、トランス脂肪酸を含まず、母乳に含まれるラウリン酸という免疫力を高める成分を多く含む油だということが分かり、本格的に輸入しようと決心しました。お菓子の材料にもできる一方、瓶詰めにすればスーパーにも卸せます。個人事業主から株式会社へ転身し、お菓子屋さんから原料屋さんに、ひとつ川上へ行くことにしました」

 そのとき、ココナッツオイルは売れる、と自信を持っていたといいます。

 「アパレル業界でバイヤーをしていたこともあり、『ちょっと先を見る』訓練はしていました。ココナッツオイルはトレンドになる要素がそろっていました。1つ目は、アメリカのセレブリティーが使っている。2つ目は、使い方が明確で、アメリカではバターの代用としてベーキングに使われている。さらに、当時はバター不足という状況や、マーガリンなどに含まれているトランス脂肪酸が海外では規制されたというニュースなどもありました」

 当時日本でもココナッツオイルを扱っている会社は何社かあったものの、マスを対象にしている会社はなかったといいます。

 「私は初めから、色々な人が通うスーパーの棚を売り場にすると決めていました。さらに、パンに塗るバターをココナッツオイルに変えてみて、という売り方1本に絞ったんです。ココナッツオイルは、何に使ってもいいってみんな言うんですよ。でも、何でもいいって一番刺さらないんです。使い方も分からない

 「私はココナッツオイルを健康食品というより、おいしいから食べてという言い方にしました。私自身、パンやお菓子を焼くときのバターも大好きなんですが、食べたときに少し罪悪感を感じるんです。でも、ココナッツオイルは油の種類が全然違うので罪悪感がなく、しかもすごくおいしいんです。それまで罪悪感がない油というと、ごま油や菜種油が多かったけれど、おいしさやコクが物足りないと思っていました。そのため、ココナッツオイルで作ると抜群においしくなるから、ちょっと使ってみて、というところからスタートしました」

スパイスとハーブを輸入するためにスリランカに出張したときの様子
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