夫婦間の危機というほどでもありませんでしたが、妻が子育てで大変だなって思うことは多々ありました。もともと、結婚前に一人暮らしを4年くらいしていたので、家事はひととおりできるし、料理もけっこう得意。とはいえ、結婚してからは仕事が忙しくてすべて妻任せになってしまった。帰宅は早くても21時以降で22時くらいになることも珍しくないので、既に長男は寝ている状態。妻は育児に疲れているので、あまり会話もできない状態でした。

 そんななかで、2人目となるとかなりキツくなってきますよね。妻は子育てでしんどくなるというだけでなく、本当は仕事がしたいとか、自分の時間が持てないという精神的なしんどさもあるだろうと思ったし、それが見てとれましたから。もっと妻の時間をつくってあげるという意味でも、育休を取得しようと思いました。

校長と教頭が背中を押してくれた

── 当時、男性教諭で育休を取得した人は、どれくらいいたのでしょうか?

よしもと 取得後に聞いたのですが、大阪市内で2%とのことでした、全国平均でも3%以下と言われていますが、ただ、この数字は1週間とか2週間育休を取得した教師も含まれた数字です。ですので、1年間の育休を取得した男性教諭というのは、大阪市内で1%にも満たないようです。噂で私よりも先に1年間の育休を取得した男性教諭がいると聞いたことがあるのですが、本当に数えるくらいしかいないというのが実態だと思います。

── ほぼ前例のない、男性教諭による1年間の育休取得ですね。ご苦労もあったと思いますが、取得するまでの流れや、職場での周囲の反応などはいかがでしたか?

よしもと 女性の場合は、産休も育休も当たり前のように取得することができますが、男性の場合は女性よりも要職に就いていることが多いんですね。僕は、教務主任という役職でした。教務主任というのは、学校の予定管理をすべて任される立場です。さらにクラスの担任も任されているといった状況でしたので、急に休むと言ってもすぐに代わりがきくわけでもありません。最初、当時の上司である校長と教頭に相談に行ったときに、どうしようかという話になりました。

 校長も教頭も、「役職的に大変なポジションでやってくれているので、1年間の育休となると大変だ」ということで困惑していました。ただ、そのころは男性の育休取得に関して話題になっていましたし、世間の目も向いているから、タイミングとしてはいいんじゃないかということでご理解をいただきました。最近ではイクボスという言葉も定着してきていますが、そういう意味では、育児に関して理解いただける校長と教頭だったので良かったですし、感謝をしています。

 実は、校長も教頭も3人のお子さんがいらっしゃって、「もっと育児や子育て、家事をしたかったけれども、妻に任せっきりになってしまった。本当はもっとやりたかったんや」と言ってくださいました。校長や教頭になられる方たちですから、教諭時代はかなり熱心に部活の指導も含めて指導されてきた人ですので、それだけ忙しかったんだと思います。

 初めて相談しに行くときは、完全に突き返されたら諦めようと思っていたのですが、逆に応援してもらえて、背中を押してもらえるという予想外の結果となりました。僕が1年間、育休を取得することで、担当していた仕事が回りにくくなる。僕が負担していた仕事を代わりにやってくださる方がいて、実際に大変だったと思います。でも、意外なことに、男性の同僚や上司の皆さんが、みんな僕の背中を押してくれたんです。最初は驚く人がほとんど。でも、「1年間ってスゴいなあ、やるからには頑張りや!」って言ってくれました。

 逆に、これまで育休を取得されていた女性の同僚のほうが「男が取得しなくてもいいんじゃない?」っていう感じで冷ややかな反応をする人が多かったのがちょっと残念でしたね。「別に男は働いておけばいいんじゃない?」とか、「奥さんだけでも2人の面倒見られるんじゃないの?」と。予想していた反応が男女で逆だったのは、新しい発見でしたね(笑)。