こうあるべきといった、これまでの父親像に縛られることなく、それぞれの家族にとって最適なカタチを模索しつつ、妻と共に自分らしく育児を楽しんでいる。そんなパパたちに、子育て中のパパライターがインタビューする連載です。

 第6回は、コンサルティングのエキスパートである永井貴博さん。4年前に独立し、ユニイク代表取締役として、本業のコンサルティング業の傍ら、子どもの発信力を養い、人の役に立つ喜びを知ることで、自ら学んでいく力を身に付けるための教育プログラム「こども宣伝部」を主催している。他人の価値観のなかで生きてきた自分に気づき、独立後は自分の価値観で生きていこうと決心した永井さんに、目指す父親像、家族像とともに、これからの子育て・教育、ご自身の仕事観についてお話をお伺いしました。

<前編>「他人軸」から「自分軸」に生き方シフト、起業パパ

表現力を持つ子どもが増えると社会が変わる

── ネットショップのコンサルティングのエキスパートでもある永井さんは、ユニイクという会社で子どもの発信力を養いつつ、人の役に立つ喜びを知ることで自ら学んでいく力を身に付けるための教育プログラム「こども宣伝部(こどせん)」を主催しています。これからの時代を生き抜く子どもたちにはどのような力が必要とされていて、それをどうわが子にも伝えたいと考えていますか?

永井貴博さん(以下、敬称略) 僕が「こども宣伝部(こどせん)」という教育プログラムを始めた理由は2つ。一つは価値観の尺度の話です。今、学校の中には価値観の尺度の数はとても少ない。運動ができるか、勉強ができるかといった2軸しかない。そうなると、勉強も運動もデキるとイケてるヤツということになる。一方、勉強はできるが運動がデキないと“オタク”、運動はデキて勉強がデキないと“運動バカ”みたいになってしまいがちです。

 価値観の尺度が少ないからそうなってしまうんです。尺度が少ないということは、その部分だけ頑張ればいいからと励まされることもありますが、苦しむ子どもも当然でてくる。では、どうすればいいのかというと、価値観の尺度の数を増やしていかないといけないと思っているんです。

 例えば、昆虫に関してすごく詳しい子どもがいれば、「虫博士だよね」と虫に関しては天才だと評価されたり、絵を描くことが上手な子どもはそこで評価されたりする。そういういった尺度が一つでも自分の軸としてあれば、その子どもは幸せになれるはず。すべての人の心のなかの尺度を増やすことができれば、子どもだけでなくすべての人が幸せになれる。

 これからの教育において「思考力・判断力・表現力」を養うことが重要視されていますが、なかでも特に表現力が一番、大事だと思います。なぜかというと、普段、僕は中小企業のコンサルティングをしているのですが、みんないいモノを持っているのに形にしていないんです。形にできないからうまくPRしたいモノやコトがアウトプットされずに、そのバリュー(価値)を出せていない。そういう会社がほとんどです。

 これは会社の中にいる私たち大人の大きな課題なんですよね。大人はインプットするだけの教育を受けてきたので、知識だけを詰め込むことは得意ですが、それを表に出すアウトプットが苦手な人が大多数。そういった大人が増えないようにするにはどうしたらいいのかと考えてみると、子どものころからアウトプットする楽しさを知り、それが誰かの役に立つという目的意識を持つ経験をすることがいいと思った。この2つの経験をすることで子どもたちの表現力は高まるでしょう。表現力のある子どもがたくさん育つようになれば、社会の変革になる。それが、こどせんの大きなビジョンなんです。

「これからの教育において『思考力・判断力・表現力』を養うことが重要視されていますが、なかでも特に表現力が一番、大事だと思います」
「これからの教育において『思考力・判断力・表現力』を養うことが重要視されていますが、なかでも特に表現力が一番、大事だと思います」
永井貴博さん

早稲田大学卒業後、2004年にJTBに入社。2年後に楽天に転職して楽天市場事業に配属される。年間売上最大のショップオブザイヤー店舗を同時に6店舗輩出するなどして、2013年に楽天グループ総合MVPを受賞するも、いつも他人が決めた価値観“他人軸”で生きている自分からシフトしたいと独立を決心。コンサルティング経験から「せっかくいいものを持っているのにアウトプット出来ていない人や企業を強くしたい」と教育を志し、教育先進国オランダへの短期留学を経て2013年にユニイクを設立。子どもの発信力を高めるための教育プログラム「こども宣伝部」を主催。失敗談をお題に、中高生と対話することでお互いに学びを得る「中高生と、色々あったけど今が一番楽しい大人との対話の会」実行委員代表も務める。2児のパパ。