小さなケンカで齟齬を消していく

── 夫婦円満そうですが、夫婦ゲンカはあまりないですか?

永井 けっこうありますよ。でも小さなケンカが多いですね。例えば洗剤をどうするかで、よく落ちるケミカル派の僕と、成分の優しいオーガニック派の妻とで、どっちを買うべきかでケンカしたり(笑)。でも、小さい夫婦ゲンカをすることが夫婦円満の秘訣なのかな、と思いますね。小さなケンカをし続けて理解し合っていれば、大きな問題にならない。小さな齟齬を消していくようにしておけば、違和感なく暮らしていけると思います。

 あと、これはちょっと僕たち夫婦の独特な遊びですが、「今日の学びの時間」というのがあるんですよ。毎晩、今日学んだことをシェアする時間を必ず持つようにしています。「今日、こんなことがあって、こんなミスしちゃった」とか「こんな話を聞いてさあ、こんな学びがあった」とか。最寄り駅まで妻が車で迎えに来てくれたときに、車内で今日学んだことをシェアしたり。周りから見たら変な夫婦と思われるかもしれませんが(笑)、やってみると楽しいので、ぜひ、オススメしたいですね。

 もう一つ、夫婦円満に役立つのが、「大ボラ吹き大会」です。今、想像し得る最も最高の未来を思い描いて大ボラを吹くというもの。例えば、「小説家になって5万部売れている」という設定の大ボラを吹いたら、「え? 5万部でいいんですか? 25万部じゃないんですか!?」と突っ込んだりする。さらに、「確かに本がそれだけ売れたら、取材とか来ちゃって大変だよね」とか「そのうち、文科省から呼ばれて、当然、有識者会議に出ることになるよね」とか(笑)。

 自分の限界や既成概念があるので、その枠を取っ払っていくトレーニングの一種なのですが、それを夫婦で遊びとしてやっています。これをやると、ビジョンが広がって楽しいというのもありますが、夫婦で楽しい時間を過ごすことができるし、夫婦の会話も増えます。

イキイキ働く姿を見せる親であり続けたい

── 今後、父親として家族と共にどう歩んでいきたいと考えていらっしゃいますか?

永井 とにかく、自分たち夫婦が楽しむことが大事だと思っているので、いかに毎日を楽しむかをメーンに考えながら、家族というプロジェクトを進めていきたいと思っています。繰り返しになりますが、子どもを輝かせたいのであれば、親が輝いていないとダメ。親が苦しそうに生きているなら変えないとダメだし、楽しいのであれば、それを広げていけばいい。そういう生き方を親が選んでいけるかどうかが、カギだと思います。

 自分はこう生きるとか、こういう方向に行くと自ら決断して、リスクがあっても踏み込んで生きている人は、幸せな人だと思うんです。逆に、会社だとか周りの人に生き方を“決めさせられている人”は、幸せにはなれない。だから「幸せな家族を作る」と自ら決めて、そのためにどう行動するか、自ら腹を決めてやっていけばいいと僕は思います。

 僕が独立したのは、“自分の軸で自分を輝かせること”がしたかったからです。最近はワークライフバランスだとか、働き方改革だとかいう言葉が飛び交っていますが、プライベートの幸せ感も仕事での充実感も、両方とも増やすことはできると思っています。多忙な毎日でも、幸せ感があればそれでいいと思うし、子どもと接する時間を増やしたほうが幸せで充実していると思うのであれば、増やせばいい。同じ時間を過ごすのでも、どのような心持ちで過ごしたいのかは、自分で決めていいことですから。

 働き方改革では、残業時間を減らして自分の時間をつくろうと言いますが疑問があります。働く時間が長くても、その時間は本人が楽しくて充実していて、世の中に貢献しているならそれでいいじゃないですか。そういうパパを見て、きっと子どもはカッコイイと思ってくれると思います。だから、いつも生き生きとしている姿を子どもに見せる親であり続けたいと思っています。

教育プログラム「こども宣伝部」で、街を取材する子どもたちの様子
教育プログラム「こども宣伝部」で、街を取材する子どもたちの様子

(取材・文/國尾一樹)