これからの社会は「巻き込み力」が必要

── 自分を持ち、表現力のある子どもが増えていくと、社会が変わるということですか?

永井 すべての人がそれぞれの尺度を持ってうまく表現すれば、いろんな角度でお互いに協力したり、協業したりすることができます。さらに、人が尺度をたくさん増やしていくと、自分なりの世界を作っていける。これからの世の中では、自分なりの生き方、自分なりの好きなことを表現していくことが一番、大事になっていくと思っています。

 なぜなら、ひと昔前とは違って、「私はこう思う」と生きていける時代に向かっていると思うからです。動画を作ることが好きならユーチューバーのように動画で生きていける時代になっていますし、絵や写真など、好きなことがあればうまくアウトプットすることで食べていける社会になりつつある。自分の生き方を実現するために必要なのは、やはり表現力。パブリック・スピーキングの力も必要になるので、そこに行き着くための武器を子どものうちに渡してあげたいと思っています。

 これからの教育では「活用する力」も重要視されていますが、知っていることをどう扱うかが大事。そのために必要なのは表現力であることは間違いないでしょう。これからの社会はもっとグローバル化していきます。そこで何が起こるかといえば、自分一人でできないことが多くなる。人を巻き込んでいかないと。何が必要かというと、話す力だったり、表現する力だったりします。自分がやりたいことを説明して、仲間に加わってもらったり、賛同してくれる人を増やしつつ、実現させていくという力が大事だと思います。

わが子にどんな手助けができるか考える

── そういった力をわが子にも養ってもらいたいと考えているのでしょうか?

永井 わが子のこととなると、ちょっと感覚的に違うかもしれません。というのも、わが子をこう育てよう具体的な像は持っていなくて、親として、わが子にどんな手助けをできるだろうかと考えているんですよ。どちらかというと、“子育て”ではなく、子どもが主語の“子育ち”を支援する役割を親として担っていこうという感覚です。

 そういう意味で言えば、ちょっと唐突な話ですけれど、長男に関しては「この子は世界中の人を助ける子になる」と決まっているんです。あえてそう言うようにしていて、先に点を打っている。そうなることに決まっていることに対して、僕ら親は何をしたらいいのかという考え方。だから、積み上げているのではなく、こうなるから、そのために何をしてあげたらいいのだろうと考える。先に点を打っておいて、そこに線を引いているんです。そのプロセスを一緒に楽しもうと。

「どちらかというと、“子育て”ではなく、子どもが主語の“子育ち”を支援する役割を親として担っていこうと思っています」
「どちらかというと、“子育て”ではなく、子どもが主語の“子育ち”を支援する役割を親として担っていこうと思っています」