「刑事から外してもらえませんか」

―― それで、どうしたんですか?

草薙 刑事課長のところに頭を下げに行きました。「刑事課から外してもらえませんか。もう家庭が壊れてしまうかもしれないので」と。

 その刑事課長は、昔ながらのたたき上げという雰囲気の人で、正直すごく怖かったです。「おまえ、何言ってんだ!」と怒鳴られると思いました。でも、課長は一言「分かった」と。その翌日には、私を異動させるよう県警本部にかけ合ってくださっていたようです。すごく感謝しています。

―― でも、盗犯係の刑事としてやっていきたいと強く思っていて、それが実現したのに、自ら手放さなきゃいけなかったわけですよね。そのことについてはどう思われていたんですか?

草薙 それは正直に言うと、ものすごく悔しかったです。泥棒の刑事は、本当にやりたかった仕事だったので。なんとか仕事をセーブすることで両立できないかなと思って、上司も気を遣って仕事をふってくださっていたんですが、もう限界でした。事件って、こちらの都合を考えて起きるわけじゃないので、今まさに被害に遭った人が苦しんでいるというときに、「家庭があるので…」と帰るわけにはいかない。刑事か家庭か、どちらかを選ばざるを得なかったんです。

 刑事課長に頭を下げたときは、「俺、刑事として終わったな」と思いました。きっと上の人たちも、これからは自分のことを“使えない人間”として見るだろうな…と。でも、家庭を壊してまで続けるという気持ちは私にはなかったです。妻も、自分も、本当に限界だった。刑事課の皆さんには迷惑をかけたので、本当に申し訳なかったです。

 でも、誰も私のことを「裏切り者」とか「ダメだこいつ」みたいには言わなかったので、それはありがたかったです。

―― それで昨年、現在の留置管理課に異動されたんですね。前回、3交代制の勤務だとお聞きしましたが、奥様と家事や育児の分担はどうされているんですか?

草薙 当直の勤務が終わって家に帰るころには子どもたちは保育園に行っているので、夕方にまず迎えに行きます。私の実家が近いので、そのままおばあちゃん家に行って一緒に夕ごはんを食べたり、近くを子どもと散歩したり、遊んだり。今住んでいるのは神奈川県の県央地域なんですが、のどかな田舎なんです。畑で農家の人と一緒に大根を取らせてもらったり、乗馬クラブで馬を眺めたり。本当にのんびりしています。

 あとは私が子どもたちをお風呂に入れて、寝かしつけています。20時くらいには寝ちゃいますね。

 翌日の週休の日は、朝から子どものご飯や着替えをさせて、朝の準備をします。保育園の送りは、妻が出勤途中に連れていってくれています。迎えは私で、あとは前日と一緒ですね。週休の日は私が夕食を作ったりします。

―― お休みの間、自宅で仕事したりすることはあるんですか?

草薙 それはないですね。仕事とプライベートはくっきり分かれています。

 子どもが保育園に行っている間は結構時間があるので、掃除したり料理したり。まあ、のんびりしていますね。