音楽隊から刑事に異動した妻

―― ここで一度奥様についてお聞きしたいのですが、同じ警察官ということですよね。同僚だったということでしょうか?

草薙 そうですね。最初に配属された茅ケ崎警察署の地域課の後輩でした。

―― お付き合いのきっかけは何だったんでしょうか?

草薙 例えば同じ勤務日だったときとか、年の近い同僚同士で仕事終わりにご飯を食べに行ったりしていたんですよね。最初はみんなで食べていたのが、だんだん二人で行くようになって…みたいな感じです。

―― 奥様の勤務部署はずっと地域課のお巡りさんだったんですか?

草薙 地域課のあと、広報県民課の音楽隊に行きました。カラーガードといって、音楽隊の演奏のときに旗を振って演技をする仕事です。パレードのときは先頭を歩いて旗を振りながら行進したりします。もともと私が進みたいと思っていた音楽の道を、演奏ではないけれど妻がさらっとやっていた、という感じです(苦笑)。

 それから機動捜査隊という、刑事部の中の部署に異動しました。妻がやっていたのはいわゆる覆面パトカーで、日ごろ事件事故の抑止や検挙に目を光らせつつ、何か事件が起きたらすぐに駆け付ける、そういう業務です。

―― 奥様は草薙さんが本当はやりたかった音楽隊に行き、それから同じ刑事の道を進んだわけですね。なんだか不思議な縁を感じる話ですね。結婚されたのはどのタイミングだったのですか?

草薙 出会ったのが2008年で、結婚したのはその4年後の2012年の10月でした。私が32歳、妻が26歳のときです。翌年に長男が生まれました。その育休中に第2子を妊娠しまして、2015年に長女を出産。つまり、産休、育休、産休、育休と立て続けに取ったんですね。妻が職場に復帰したのは2016年。2年9カ月のブランクを経ての復職でした。

―― 奥様は結婚、出産を経ても仕事は辞めなかったんですね?

草薙 そうですね。辞めようかなとか、そんな言葉も聞いたことがないです。意志の強い人ですね。

―― 奥様の復帰前に、家事や育児の負担を二人でどう分け合うのか、そういった話し合いはされたんですか?

草薙 それを全くしなかったんです。これがマズかったですね。そのまま一方的に妻が育児を負担して、それですごくギスギスしてしまって。刑事の仕事は夜も不規則で、数日間帰れないこともあったし、土日も当然のようにいない。妻もイライラして、私もどうすればいいか分からない。離婚も覚悟しなくちゃいけないな、というような修羅場でした。

―― そこで草薙さんが下した決断と行動とは。後編でお送りします。

(取材・文/日経DUAL編集部 田中裕康 撮影/江藤海彦)