連続空き巣事件の捜査で刑事の面白さに目覚める


―― 実際に現場の仕事に従事してみて、いかがでしたか。

草薙 最初は茅ケ崎警察署の地域課で、駅前の交番に配属されたんですが、最初の印象は「おまわりさんって忙しいんだな」「夜中も寝ないでずっと仕事してるんだな」と思いました。地域課の警察官も3交代制で、一回の勤務で24時間働くのですが、一応夜は仮眠する時間帯があることになっているんです。でも実際は事故や事件などの現場が続いて、一睡もできないということも珍しくありません

 茅ケ崎だったので、特に夏場は忙しかったです。海でけんかとかもしょっちゅうで。当時まだ24、5歳だったんですけど、最初はベテランの先輩警察官と一緒に行動するんですが、すぐ一人で現場に行かされるようになるんです。そうすると、事件事故の現場に行っても、当事者から「お前みたいな若造が一人でどうするんだ」みたいなことを言われたりします。それでもなんとかするしかないので、もう必死でした。

 それで茅ケ崎に来て1年くらいたったころ、連続空き巣事件が起きたんです。1日で3、4軒が被害に遭うような悪質な手口で、捜査本部が立ち上がりました。人手が足りないから、地域課から若い人を応援に出してほしい、と要請があり、たまたま私が駆り出されることになりました。そうしたら、刑事の仕事にハマってしまったんです。

―― 刑事事件の捜査は、警察の仕事でもやっぱり花形ですよね。奇しくも、小さなころに書いていた作文の夢がかなったんですね。

草薙 最初は犯人の目星もついていなかったんですが、空き巣の手口の癖とかを検証して、犯人像を少しずつ絞り込んでいって、被疑者の候補がいくつか上がってきて…。その過程を刑事さんにくっついて一緒に経験させてもらいました。被疑者の一人を尾行したりもして、最終的に犯人を逮捕できました。その取り調べの調書も私に書かせてもらえたんです。この経験が大きくて、それから刑事の仕事にのめり込んでしまいました。

 空き巣事件が解決しても、今度はひったくりが連続して起きたりして、そのまま刑事課に1年半くらい応援に行きっぱなしでした。家に帰れないくらい忙しかったですが、独身でしたし、苦ではなかったです。このころ、盗犯、つまり泥棒の刑事としてずっとやっていきたい、と思うようになりました。

―― 辞めたくて仕方なかった警察学校のころからすると、考え方が180度変わったんですね。でも、仕事が楽しいときはどんなに働いても苦じゃない、という経験は、一般企業で仕事をしている人でもよく聞くエピソードですね。

草薙 それで一度地域課には戻ったんですが、27歳のとき、念願かなって刑事課に異動できました。警察署も移り、相模原南警察署の刑事第一課盗犯係に配属されました。ここでは、思い切り刑事の仕事に没頭しました。