あぁ勘違い! 「腕立てふせ」は不要だった

―― 体つきが多少変わっても、服やスーツを着ていればそれほど見た目には変わらないんじゃないかという気もしますが、どうでしょうか?

古家 そんなことはないですね。自分ではそれほど変わってないと感じても、必ず人から言われると思います。筋肉の張りと、それによる姿勢の変化で、見た目がかなりシュッとして見えるはずです。

 僕はいつも背中とお尻など、後ろ姿を中心に鍛えよう、とみんなに言っています。人の正面って、あまりジロジロは見ないですよね。みんなが見ているのは背中なんですよ。格好いい人は、後ろ姿が違います。「あの人、背中が頼もしい」「スーツのジャケットの着こなしがカッコいい」って。背中に張りがあって、お尻がキュッとしまっていると、シルエットが変わるんです。

―― 背中やお尻って自分では見えないから、つい、胸とか腕を鍛えたくなるんですけどね。

古家 男性ってすぐそう思いがちなんですけど、胸と腕の筋肉が、一番要らないですから!

―― えっ、そうなんですか。

古家 女性も、男性の分厚い胸板や太い腕なんて、そんなに求めていません。男性のたくましい大胸筋が好きという女性は、少数派だと思います。

―― これ、大半の男性は勘違いしていますよね。筋トレするぞ! と意気込んだときって、まず腕立てふせから始めるじゃないですか。

古家 男性はすぐTシャツがパンパンになるほど厚い胸板とか、盛り上がった力こぶとかをイメージしがちですよね。もちろんガリガリよりはあったほうがいいのですが、胸の厚さや腕の太さは行き過ぎると暑苦しくなるので、見た目上は重要ではありません。それに、そもそも普段から鞄を持ち歩いたりして、腕の筋肉は自然に鍛えられる部分でもあるので、ことさらトレーニングする必然性も低いんです。

 もし腕を鍛えたいなら、肘から下の前腕です。仕事中も、ちょっと腕まくりするときとかありますよね。シャツの袖をまくったときに、肘から手首にかけて筋張った、引き締まった腕をしていると女子ウケはいいはずです。女性は自分にはない雄っぽさに男性を感じるので、血管が浮いているとか、細いのに締まっているとか。重要なのは力こぶより断然こっちです。

古家 女性は、いわゆる“ゴリマッチョ”のような、筋肉ムキムキのタンクトップ姿はあまり好きではない人が多いですよね。そもそもタンクトップを着るのは、鍛えられた胸と腕を出したいからですが、それははっきり言って逆効果。たまに見せる腕まくりの筋肉のほうが好かれます。

―― そう言われると、確かにそんな気もします…。

古家 ボディービルダーは、ボディービルの世界では奇麗でカッコいいのですが、妻や娘にモテたい、職場でカッコいいと言われたいのであれば、目指すべきはゴリマッチョではなく“ソフトマッチョ”です。 筋トレをやり過ぎてバッキバキの体になってしまうと、一般の人にとってはちょっと気持ちが悪い。少し脂肪が乗っているくらいで、うっすら腹筋が割れてるかな? くらいがちょうどいいんです

 分かりやすくイメージを伝えると、究極のソフトマッチョは三代目 J Soul BrothersやEXILEです。彼らは細いのに引き締まっている。さらに動ける。そんな、ソフトマッチョなパパを目指しましょう!

―― 次回は、筋トレを続けるモチベーションについてのお話です。

(取材・文/北野啓太郎、日経DUAL編集部 田中裕康 撮影/川田雅宏)

古家政吉
1969年生まれ。日本初のプライベートトータルリラクゼーションサロン「HOGUMI」の運営を行いながら、独自のメソッドを用いたパーソナルトレーニング事業を展開。トレーニング初心者はもちろん、芸能人やトップアスリートまで、数多くのトレーニング指導を行っている。代表的なアスリートには京太郎選手、長島☆自演乙☆雄一郎選手など。著書に『カラダ革命 腹を凹ます』『自重筋トレの教科書』(いずれも日本文芸社)など。