目の前の現実にフォーカスし過ぎないように

林田 奈緒子さんがワーママ会を立ち上げた頃は、利明さんは仕事が辛い時期だったんですよね。ワーママ会を立ち上げることに対してはどのように思われましたか?

利明 「彼女らしいな」と思いました(笑)。ただ僕自身は、土日は仕事でいないことが多いですし、いるときはワーママ会に一緒に行っていたので、特に負担には感じませんでしたね。

 結婚する前から何か始めたら突き進む性格だということは分かっていたので、妻にとってはやらないほうがストレスになったでしょうし、そこでストレスがたまると逆にこっちが困りますし。ただ、ワーママ会が忙しくて、週末に妻が洗濯などをできず、仕事に行く僕が洗濯したりしていると、イライラしてしまうことはありました。実は、今もそれは変わりませんが(笑)。

 ただ、基本的な家事育児の負担は妻のほうが大きいですし、週末は僕もいないことが多いので、ストレスがたまるのは分かっていました。だから、ワーママ会が理由で家事が多少できなくても、そこは黙っていました。

奈緒子 もちろん「ごめんね」と「ありがとう」はしっかり伝えますよ。ただ、家事が多少滞っても、別に命に関わるようなことではありません。そのあたりの価値観は夫も同じなので、救われています。

林田 ワーママ会で活動することでママたちは何を得ていると思いますか?

奈緒子 ワーママは、「仕事と子育ての両立でいっぱいいっぱい」の現状ばかりに目がいって、苦しくなりがちです。でも、地域で同じような境遇のママたちとお互いをサポートし合ったり、地域に関わる活動をすることで、その苦しい毎日に埋もれてしまいそうな自分を引き上げることができるのかもしれません。ワーママ会で活動することで、大変過ぎる共働きの現実だけを考え過ぎないというか。中長期的なキャリアプランのような具体的なものではないけれど、「子育てしながら、でも、仕事もやっていこう」というゆるやかなビジョンのようなものを描いて、仲間と励まし合いながら向かっていくことで、大変な日々を乗り越えられるのだと思います。

林田 パパ会はいかがですか?

利明 僕たちは自分自身のためもありますが、どちらかというと、自分たちの子どもたちにとって、住むところを気持ちのいい地域にしてあげたいという気持ちが大きいと思います。つながったパパの数だけ、子どもの可能性を広げてあげられると思うんです。

 例えば、私も妻も子どもも、自然の中で遊ぶのが大好きです。でもキャンプ道具を一式そろえるというところまではできない。キャンプをしたくても、やったことのないパパにはハードルが高いですよね。でも、キャンプ好きなパパ友と一緒に行くことで、それが可能となる。だから自分だけでは子どもに体験させることができないような、タケノコ狩り、田植えなんかも一緒に経験できました。

 それに加えて、やっぱりママとの関係を良くしたいということが共通の認識ですね。パパの家庭での悩みや課題をシェアできることで、ママへの“対応力”が高まり、ママが笑顔で生活できるようになります。また子どもにとっては複数の大人と関わることで、社会性が養われるという面もあると思います。

林田 ワーママ会とふなパパでは、少しコンセプトが違うのが面白いですね。次回は、地域と関わるために一歩踏み出すためのアドバイスやコミュニティー運営のポイントについて伺います。

高橋(尾上)奈緒子
「船橋ワーキングマザーの会」代表
「ワーキングマザーの会 全国ネットワーク」代表
一般社団法人キャリア教育総合研究所、プログラムコーディネーター。キャリアコンサルタント、産業カウンセラーとして働く女性の「仕事」「家庭・パートナーシップ」「子育て」を包括した、生き方・キャリア支援を行う。2012年に船橋ワーキングマザーの会を立ち上げ、代表に就任。2017年、全国ネットワークも立ち上げ、来年の正式発足に向けて準備中。
船橋ワーキングマザーの会:https://ameblo.jp/funabashiwmama/
ワーキングマザーの会 全国ネットワーク:https://ja-jp.facebook.com/NWMSnetwork/
高橋利明
「船橋パパ会」代表
介護福祉士・社会福祉士
大学まで野球部。人生で大切なことは野球と『ドカベン』から教わる。36歳で長男誕生。ワークとライフのバランスに悩む時期を経て、地元のパパ友と「船橋パパ会」を立ち上げた。パパ会の理念は「パパによるパパとパートナーと子どものためのパパ会」。
船橋パパ会:https://m.facebook.com/funapapa16/

(撮影/岩澤修平)