ママ一人に育児、家事の負担がかかってしまう“ワンオペ”解消に向けたノウハウとして、様々なリソースと連携したマルチオペレーション型の「マルオペ育児」へのシフトを提案する本連載。今回は、「自分たちらしいチームわが家」について考えます。

 アウトソーシング先進国シンガポール在住のある共働き家庭の例を参考にしながら「誰がケア(家事・育児)を行うのか」を掘り下げます。キーワードは、「思いの共有」と「ケアはワーク?」です。

誰に、どこまで頼る? 「チームわが家」の疑問点

 本連載では、家庭内外のリソースやアウトソーシングを活用する「チームわが家」を“ワンオペ育児”からの脱却法の一つとして提案してきました。これまでの連載では、自身も子育て真っ最中の9人の専門家や実践者の皆さんに「チームわが家」構築のヒントやアイデアを、対談を通じてお話ししてもらいました。

 家事・育児を夫婦2人だけでなく、様々なリソースに頼りながらチームで子育てをすることで、家庭生活に時間的、精神的な余裕を生むことができます。さらに、チーム育児は夫婦関係や子育てにもプラスの影響があること、地域コミュニティーとのつながりを強め、祖父母も含めた家族の幸せも高めること、さらには仕事にも役に立つことが分かってきました。

 また、アウトソーシングなどに伴う金銭的な負担についても、その後のキャリアの継続を考えれば、「投資」と捉えることができることも皆さんに共通するお話でした。

 その一方で、「誰でもいいからとりあえず頼ればいい」「大変だからなんでもアウトソーシングをすればいい」というものではなく、家族一人ひとりが望む働き方やライフスタイル、また大切にしたい価値観を夫婦で共有し、それを軸にそれぞれの家庭に合ったチーム作りをすることが重要だというアドバイスも多くありました。その軸がなければ、結局は夫婦で家事・育児を押し付けあったり、サポートしてくれる人を傷つけてしまったり、家族の誰かが不満を持っていたりと、自分たちが思い描く「チームわが家」は実現することができないということです。本連載の中で何度も出てきた「共有」という言葉。これがわが家らしいチーム構築の一番のキーワードだと思います。

 しかし、「どこまで頼るか」「誰に頼るか」は見極めが難しく、実際にやってみないと分からないこともあります。そこで、今回はアウトソーシング先進国であるシンガポール在住のある共働き家庭の事例をご紹介しながら、考えてみたいと思います。

 お話を伺ったのは、シンガポール在住歴4年の岩鶴香緒里さん。会社員の夫、7歳の娘さん、1歳5カ月の息子さんの4人家族で、ご自身は現地法人で人事の仕事をしています。