親と無理に仲良くするよりも、孫との関係性をつくることを優先

林田 きっと徳倉さんご夫婦がおじいちゃん、おばあちゃんの幸せを大切に考えてくれているということがしっかり伝わっているんでしょうね。だからこそ、負担に感じることなく孫と楽しく関わることができる。とても大切なことですね。

徳倉 そう思います。私はもともと両親といい関係にあると思っていますが、特に父のことはとても尊敬しています。父も会社を経営していたのですが、体が弱い母をサポートしながら、私たちきょうだいのお弁当を作ってくれたり、学校の行事に来てくれたり、子どもとよく関わってくれました。今とは時代が違うことを考えれば、それは本当にすごいことだと思います。今でも父とはよく話をしますし、そんな子ども時代があったからこそ今の関係があると思っています。もちろん、義理の両親ともいい関係を築けています。

林田 両親との関係があまり良好ではないという人や、同居や近居をしているけれど関わり方に悩んでいるという人もいると思います。また、実家から出て離れて暮らす期間が長いと、親子の関係も子どものときとは違ってきて、難しいと感じる人も多いと思いますが、そういう人たちに何かアドバイスはありますか?

徳倉 親との関係がよくないのなら、無理に仲良くしようとするよりも、孫と祖父母の関係を良好にすることに注力したほうがいいと思います。まずは祖父母に「孫がかわいい」と思ってもらうことが大事です。そうすることで、祖父母自身が「孫と一緒に過ごしたい」と思うようになり、能動的に関わってくれるようになります。孫の世話を押し付けたり、孫を理由に自分の主張を通したりするのではなく、どうしたら純粋に「孫がかわいい」「孫と過ごすのが楽しい」と思ってもらえるか、またその機会を提供することを考えましょう。

 そして、祖父母に世話をお願いしたいなら、自分のやり方を押し付けないようにしてください。任せると決めたのなら、「お菓子を与え過ぎ」とか「甘やかし過ぎ」などとぐちぐち言わないということです。祖父母のやり方が気に入らないのなら、頼まずに自分でやればいい。また、その点を夫婦で確認、合意しておくことも大切だと思います。

林田 おじいちゃんとおばあちゃんにかわいがってもらうことは、お子さんたちにとっても幸せなことですよね。さらに、香川のような大自然で伸び伸びできる環境は、教育の観点からもとてもいいことだと思います。

徳倉 そうですね。何より子どもたちにとっての故郷ができたことがよかったと思います。疲れ果てるまで走り回れるし、海水浴だってすぐに行ける。広いので「危ない!」と注意することも減りました。大好きなおじいちゃん、おばあちゃんもすぐそばにいる。そんな故郷があることは、子どもたちの人生においてもとても幸せで豊かなことだと思います。

 また、子どもの教育に関してですが、進学先や塾など、選択肢が都会より少ないことはデメリットとして捉えられがちですが、私は必ずしもそうだとは考えていません。選択肢は多ければ多いほど、正しい情報を得ることが難しかったり、労力も必要だったりして、結果的に最善の選択ができないということもよくあります。香川は私と妻の地元で、学校や教育の事情もよく分かっているので、労力をかけずに自分たちにとって最善の選択ができると思っています。

 そして、私たち親にとっても、「子育て」という期間の限られた、しかし素晴らしい時が過ごせるタスクを、祖父母と一緒に思い切り楽しむことができるということは、実は最高のメリットだと思っています。私が起業という決断をしたのも、働き方を自分でコントロールして子育てに関わる時間をつくり、子どもたちと豊かな時間をたくさん過ごすためなんです。