「0か100か」の働き方しか選択できなかった日本

林田 私もアメリカに住んでいた頃は、毎週末夫がダッチオーブンで料理をして、家族でゆっくり過ごしていました。特に何をするわけでもなく、ゆったりと時間を過ごすというあの感覚は、なかなか日本にはないですよね。

 海外は、とりあえず週末はみんなで肉を焼く! みたいなところがありますよね(笑)。オーストラリアでも、毎日家族全員で夕食をとるのが当たり前でした。その当たり前が、日本にはなかなかありません。夫も私も、オーストラリアの人たちのように、何よりもライフを大事にすることを目指したいと思ったのですが、日本に帰国したらそれはすごく難しいと実感したんです。

林田 何があったのでしょうか?

 日本に帰国して、すぐに社会復帰しようとしたんですが、「0か100か」みたいな働き方の選択肢しかなかったんです。つまり、やりがいのあるクリエーティブな仕事で成果を出そうと思ったら、長時間労働で家庭も顧みず無制限に働くしかない。働く時間に制約があると、別に私でなくてもできる仕事とか、こなしていく作業のような仕事しかなかったんです。日本ではライフを大切にした働き方は難しいと感じて、とても悩みました。そこで、フリーランスのキャリアコンサルタントとして独立することにしたんです。

林田 自分が望む働き方をかなえるために、フリーランスという働き方を選んだわけですね。

 そうです。そしてしばらくフリーランスで仕事をしていたのですが、学生時代からの知人で、現エスキャリア代表の土屋が起業したことをきっかけに、執行役員として加わりました。最初はキャリアコンサルティング事業がメーンでしたが、現在はより幅広いビジネスを展開しています。その後、共働きライフ支援をする別法人として、エスキャリア・ライフエージェンシーを立ち上げました。

林田 城さんがキャリア支援からライフ支援にシフトしたのはなぜでしょうか?

 2016年にタイとベトナムへ視察に行ったのですが、過酷な環境でビジネスにチャレンジしている若者に出会って刺激を受けました。それが新しい事業を始めたいというモチベーションになったんです。当時の私も、長女を出産し、仕事と子育ての両立を始めて3年ほど経っていて、その大変さが身に染みて分かっていたので、仕事と育児の両立を支援するようなサービスを始めたいと考えました。現在は、主に子育て家庭向け料理作り置きサービス「エスキッチン」(https://es-lifeagency.co.jp/)を運営しています。

林田 エスキッチンとは、どのようなサービスですか?

 毎日のご飯作りが大変な親御さんのために、スタッフが作り置きを提供する料理代行サービスの他、お子さんと一緒に料理をするサービスを行っています。お子さんが家庭内で役割を持ち、親御さんから感謝されることで、子どもの自信・自立・自己表現力を育みます。

 共働き家庭が増えて、これから働きながら子どもを育てることがますます当たり前になっていくでしょう。その中で、夫婦だけが頑張るのではなく、色々な人が育児に関わって、子どもの成長を共に育む「共(とも)育て」文化がもっと日本に広がってほしい。そんな思いでサービスを立ち上げました。