子どもが家庭内で役割を持つと自己肯定感が育まれる
林田 家庭オリジナルの料理を外注するという、その発想は型破りで面白いですね(笑)。つまり、離乳食も含めて家族のニーズを理解してくれている、もう一人の家族がご飯を作りに来てくれるイメージでしょうか?
城 そうですね。個人的にも2人目が欲しかったので、自分自身がつらい妊娠期を乗り切るためにも、子育て家庭のニーズに寄り添ってくれるサービスを作ろうと思い、エスキッチンをスタートしました。産前産後をサポートするマタニティー向け、2~3日ぶんの作り置きをする共働き家庭向け、食育サポーターがお子さんと一緒に料理をする3つのプランがあります。
特に力を入れているのが、教育的要素を含む3つ目です。お子さんが学校や学童から帰宅される時間に食育サポーターが伺い、一緒に料理をして、親御さんがご帰宅する頃にはお子さんが作ったご飯と3~4日ぶんの作り置きができている、というコースです。仕事で疲れて自宅に帰ると、子どもが作ってくれたご飯が既にできている。これは、本当に皆さん喜ばれますよ。
林田 サービスに「子ども」を巻き込むことにしたのはどうしてですか?
城 新しいサービスを検討しているときに、「教育」の要素は欠かせないと役員たちと考えました。会社のメンバーも子育て中のママが多く、子どもの成長に関わるサービスを作りたいという思いが一致していたんです。そこで、「子どもを巻き込もう」と、お手伝いプランに行き着きました。
料理はレシピを読んだり、分量を量ったり、国語や算数のような知識も必要です。どれくらいのさじ加減がいいのか、何を加えるとおいしくなるのか、考える力も身に付きます。また、「食べることは生きること」なので、自分で料理することは自立して生きていくための力にもつながります。
そして、家族の中で子どもが役割を持つことは、家族からの承認にもなります。それが自己肯定感にもつながると考えました。
林田 まさに、子どももチームの一員とみなす「チームわが家」のコンセプトそのものですね。内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2014年)では、海外の子どもたちと比較して日本の青少年は自尊感情が低く、それは自己有用感と相関関係がある、と指摘されています。
(参考:「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 第3部 有識者の分析」)
つまり、子どもにとって「誰かの役に立つ」という経験は、自尊感情を高めることにつながるということです。そういう意味で子どもが「チームわが家」の一員として家庭の中で活躍することは、子どもの成長にとって大切なことだと思います。「チームわが家」の裏ミッションも、子どもが家庭の中で活躍する機会の創出ですから。
城 最初に「チームわが家」のコンセプトを伺ったとき、その点に強く共感しました。夫婦どちらか、または夫婦だけで家事や育児を担うのではなく、外部サポーターやサービスを活用して、みんなで育児を担っていく「共育て」文化がもっと広がってほしいと考えています。子どもも活躍できるエスキッチンは、まさに「チームわが家」そのものだと思います。
林田 小学生だと学童に飽きてきたりすることもあるので、子どもも楽しいでしょうね。エスキッチンは単なる家事のアウトソーシングではなく、ちょっとした習い事のような感じもします。
城 その通りです。エスキッチンのご利用家庭では、お子さんがエプロンを着けて待ってくれていたり、次はこんなメニューを作りたいと子どもたちから希望が出てきたり、サポーター宛てにお手紙を書いてくれていたりと、心温まる交流が生まれています。家庭に親と子だけではない、第三者が入ることで家族間のコミュニケーションが豊かになることもあります。親が気付けなかった子どもの成長を感じられたり、他者から子どものことを褒めてもらったりして、親の育児に対するスタンスも変わってきます。
また、サービスを利用することで、ご両親に余裕が生まれ、ニコニコ過ごせる時間が多くなることは、子どもにとってもメリットだと思います。
林田 後編では、エスキッチン以外も活用している城さん自身のアウトソーシング体制について詳しく伺います。
エスキャリア・ライフエージェンシー代表
(撮影/谷本結利)