おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 魔裟斗さんから矢沢心さんに再びバトンタッチした「産後」第1回は、育児の中で感じたことや思ったこと、2人目の“まさかの自然妊娠”について語ってもらいました。第2回となる今回は、2人目の妊娠が分かってから出産に至るまでのこと、2人を産んでみて改めて感じたお産に対する思いについてです。

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2人目が欲しいなんて、恐れ多いと思っていた

 思いがけない2人目の妊娠が判明した病院からの帰り、4年間の不妊治療中は泣きながら歩いていた道を、私は声が出そうになるほど笑いながら歩いていました

 「まだ2人目はいい」と思っていたけれど、いざ授かったことが分かると、自然と顔が綻んでしまいました。周りの人が見たら、「何だろう、あの人?」って、ちょっと引くくらいだったかもしれません(笑)。

 夫に連絡すると、夫も電話の向こうで「えーっ?」と驚いて、その後笑っていました。「こんな奇跡ってあるんだな」と、2人とも言葉にならない思いをかみ締めていました。

 長女のことがかわいくて、2人目のことは考えられなかったというのは本当ですが、とは言いつつも、心のどこかで「2人目のことなんて考えるべきじゃない」と思い込もうとしていたのも、また事実でした

 1人授かれただけでもありがたいこと。2人目が欲しいなんて思うのは望み過ぎだ。恐れ多いことだ。1人目の赤ちゃんを授かるために、今も必死に病院へ通っている人もたくさんいるのに。

 そういう気持ちがありました。

 だから、「もし、もっと自分に余裕ができて、やっぱり2人目が欲しいと思うときがきたら、そのときはまた不妊治療をするのかな」と、漠然と考えていたんです。

 振り返ってみると、これも長女がくれたプレゼントなのかもしれないと思いました。長女が生まれてから、私の生活は規則正しくなりました。長女と一緒に公園に行くので、以前より体も動かすようになりました。食事は、不妊治療をしていた頃からバランスを考えて作っていましたが、長女と夫のために、さらに気を遣うようになりました。

 そんな長女と一緒に過ごす毎日が、私の体を変えてくれたんだ。私の体から悪いものを出して、2人目の赤ちゃんを連れてきてくれた。“まさかの自然妊娠”は、きっと長女のおかげだ。

 長女は私の心を変えてくれただけではなくて、赤ちゃんを授かることができる体にしてくれたんです。そう思ったとき、長女への「ありがとう」という気持ちでいっぱいになりました。

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