もっと広く知ってほしい、産むことの重み

 次女の出産を経験して、長女のときは何も考えずに自然分娩で産んだけれど、「自然分娩で産めるのは当たり前のことじゃないんだな」と思いました。「帝王切開でのお産はお産じゃない」という言葉も聞いたことがありますが、妊娠して出産して、母子ともに健康であること。それだけでも奇跡なんじゃないかと思うんです。

 帝王切開で次女を産んだ後は、手術の痕が痛くて、点滴にすがって歩いていました。退院後に次女を抱っこしていると、切った部分に当たって痛かったこともありました。それでも、育児や家事は待ってくれません。私の実母も帝王切開を経験していて、「天気が悪いと手術痕がうずく」とたまに言っていたことを思い出しました。

 そういうお産の色々なことを、当事者として経験していない男性にも、もっと知ってほしいなと思います。お産は病気じゃないと言われるけれど、やっぱり女性にとっては命がけです。様々なリスクを引き受けたうえで、自分の体を使って新しい命を生み出している。

 これだけ女性が社会に出て働くようになった時代だからこそ、そのことを理解してもらいたいと思います。

 産むことの大変さ、産むことの痛み。そして育てることの責任の大きさ。そのことを周囲の人たちや社会が知り、理解しなければ、赤ちゃんを産もうとする女性は増えないでしょう。

 だから、周りや社会が変わっていかなくちゃいけない。今までお産をした女性だけしか知らなかったことは、現代は周りや社会も知るべき時代になったんじゃないでしょうか。長女、次女のお産を通して、そんなことを考えるようになりました。

(構成/荒木晶子 撮影/鈴木愛子 企画/後藤美葉)

矢沢心 矢沢心
女優・タレント
1981年東京生まれ。1997年デビュー。
夫である魔裟斗さんは、日本人初のK-1世界王者として知られる。著書に『ベビ待ちゴコロの支え方』(主婦の友社)など。
日々の暮らしをつづったオフィシャルブログも人気。
「コロコロこころ」https://ameblo.jp/yazawa-shin/