「準緊急帝王切開」になって分かった、先生の判断の正しさ

 一刻の猶予もない「緊急帝王切開」ではなく、時間的にはもう少し余裕がある「準緊急帝王切開」だったためか、手術室には夫も後から入ることができました。

 ただ、一つ不安なことがありました。麻酔です。不妊治療で最初に体外受精のために採卵をしたときから、私は体質的に麻酔に弱いと分かっていたので、帝王切開と聞いたとき、「手術のときには麻酔科の先生に必ずいてほしい」と伝えていました。そして、それを考慮して麻酔科医が2~3人いる日を手術日とする予定でした。

 ところが、急きょ手術することになったため、この日は麻酔科医が1人しかいなかったのです。そして麻酔が始まると、やっぱりろれつが回らなくなってきました。私の血圧も下がってきたので怖くなりましたが、しばらくすると落ち着いて、脈も安定してきたので、ホッとしました。

 その後、夫が手術室に呼ばれました。そばにいてくれたのはとても心強かったのですが、一つ問題がありました。「実況だけはしないでね」と伝えて、「分かった」と言ったのに、やっぱり手術の様子を実況しちゃうんですよね(苦笑)。

 私が帝王切開することになった原因の「前置胎盤」は、胎盤が剥がれるときに大出血する可能性があります。それで亡くなる人もいるほどなので、輸血が準備されていました。私の体にはそのためのものも含めてたくさんの管が付けられていて、夫からは出血していく様子もよく見えていたようでした。

 それを夫は逐一実況するんです(苦笑)。「出血してるのが見えるよ」「やめてよ」「あ、出てきた!」「やめてって」。そんなやり取りを交わしているうちに、なんとか輸血しないで済むくらいの出血量で手術が終わりました。

 長女のときは、生まれてもなかなか泣かず、ちょっと心配しましたが、次女は生まれてすぐ、元気に泣いてくれました。でも、先生や看護師さんたちがバタバタと動いている音が聞こえてきたので、何かあったのかと思っていると、「2670グラム!」「おめでとうございます!」という声と拍手が聞こえてきました。

 2500グラム以下だと、低体重児ということで、私と同じ病室に入ることができません。予定日よりも1カ月ほど早い出産だったので、先生たちはそれを気にかけていてくれたのです。

 入院する前の健診で、大型食品スーパーの周りを散歩していると伝えると、それは良くないと言われていましたが、準緊急帝王切開をしなくてはならない状態になって、先生の言っていたことは正しかったと思いました。

 あんなところでもし出血していたら、私も赤ちゃんも、どうなっていたか分かりません。先生は、私たちのことを本当に考えてくれていたんだな。先生の言葉に従って入院して、本当によかった。そう思いました。