おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 夫・魔裟斗さんにバトンタッチ後の第2回は、二人三脚で不妊治療に取り組み、無事出産を迎えるまでのお話でした。第3回は、2人目の妊娠・出産や、子育てについてのお話です。今妊活をしている方々へのアドバイスについても伺いました。

2人目は奇跡の自然妊娠。でも、やっぱり簡単には生まれてくれなかった

 長女が生まれたときは、ベビーカーを押すのも恥ずかしかったです。「男がベビーカーなんて…」と思っていましたし、他人に見られるのもイヤでした。ましてや、抱っこひもなんて、絶対に無理!

 でも、2人の娘の父になった今は、これ見よがしに子どもと手をつないで歩いてます(笑)。「ふふん、いいだろう?」くらいに上機嫌ですよ。もしも3人目ができたら、抱っこひもだって着けて、「どうだ! 見てくれ!」とか、やってしまうかもしれません(笑)。

 長女が生まれてからは、沐浴などの育児にも関わっていたので、寝返りしたときや立ったとき、そういった節目節目も見ています。最初は正直、「生まれたなー」くらいにしか思っていませんでしたが、話すようになって、一緒に遊べるようになると、どんどん「かわいいな」と思えるようになりました。

 ただ、長女を授かるまでがとても大変だったので、2人目が欲しいとは思っていなかったんです。「1人で十分だ」って思っていました。だから、2人目ができたときは、本当に驚きました

 治療をしない限り、僕たち夫婦には子どもはできないと思い込んでいたので、僕も心も避妊はしなくてもいいと思っていて……そうしたら、なんと自然妊娠したんです。

 ある日、心が「少し前からちょっと体調がおかしい」と言って、1人目のときに通院していた不妊治療専門のクリニックへ行きました。そうしたら電話がかかってきて、「……できてた」って言うんです。

 聞いたときは、「えーっ! なんだよ、それ?」と思いましたが、「こういうときは『おめでとう』って言っておくべきだよな」と思い直して、「おめでとう」と伝えました(笑)。

 ところが、2人目は妊娠するまでは順調でしたが、妊娠経過のほうにちょっと問題がありました。妊娠6カ月目ぐらいから胎盤が子宮口を塞ぐ「前置胎盤」になるかもしれないと診断されたんです。妊娠7カ月目くらいからは出血する危険があると言われて入院を勧められ、出産も帝王切開の予定でした。

 心が入院して1カ月ほど経った妊娠9カ月目、僕が前日に仕事で地方に行って、深夜に帰宅したときのことです。夜中に何度も電話がかかってきていたようだったのですが、僕は疲れていて全く気付かず、ぐっすり眠り込んでいました。

 朝になって気付いて電話をかけ直したら、「今日帝王切開の手術をすることになったから、夫であるあなたの許可が要る」という話で。ビックリして、大急ぎで病院に向かいました。

 予定外に早まった帝王切開でしたが、緊急性がそこまで高くない「準緊急帝王切開」ということで、僕も手術着を着せられ、手術室に入って立ち会うことになりました。

 僕は心の頭のほうに立っていたので、横になっている心からは見えない手術室の様子が見えていました。もちろん手術している部分は見えないようになっていたのですが、心の体から色々な管が出ていて、出血がどんどん増えてたまっていくのは見えたんです。

 「これ以上出血すると大変だな…」と思っていると、僕の顔色が怪しくなってくるのが分かったんでしょう。心は下半身麻酔で意識はあったので、「えっ! 私、そんなに出血してるの?」と、ちょっと焦っていましたね。

 そんなことがありながらも、無事次女が生まれました。ちょっと早めの出産だったんで心配でしたが、生まれてすぐに泣き声を上げてくれましたし、体重も2500グラム以上あったので、ホッとしましたね。

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