遠回りをしないためにも実績のある病院を選んで

 今、こうして子どもがいる生活を送るようになって改めて思うのは、不妊治療を夫婦2人でやることの大切さです。子どもは夫婦どちらか1人だけでは作れない。2人で一緒に進めていかないと、かけなくていい時間がかかってしまうんだなと思い知りました。

 僕も、現役選手のころは全然関わっていませんでしたから、前回も言った通り、精子検査のときは家で採取したものを容器に入れて、妻に持っていってもらっていたんです。でも、そうするとやっぱり新鮮さが違う。それが、成功率の違いにつながっていたのかもしれません。

 一緒に病院に行くことで、奥さんも心強いんじゃないかな。女の人だって、何の不安もなく不妊治療に臨んでいるわけじゃないですよね。格闘技でも負けが続いている選手って、「一生勝てないんじゃないか」と思うそうですが、不妊治療でも、何回トライしても赤ちゃんを授かれなかったら、「何をやってもダメなんじゃないか」って、負のスパイラルに陥ってしまうと思うんです。

 だから、なるべく病院には男性も一緒に行くのがいいんじゃないかと思います。もちろん、30代や40代は仕事が忙しい時期だということは理解できますし、「お金を稼いで養うのが男の役割」と思う気持ちも分かります。まして、不妊治療はお金がかかりますから、しっかり働いて給料を稼ぐのは大事なことです。

 でも、それでもやっぱり男性に「子どもが欲しい」と思ってほしい。そのために、そして奥さんのためにも、一緒に治療に行ってほしいですね。

 僕も「子どもなんて自然にできるでしょ」と思っていたけど、そうじゃなかった。病院に行かないと難しい人もいるということを、僕が身をもって体験しているからこそ、そうしてほしいと思います。

 これから病院を選ぶ方や転院を考えている方には、まず「家から近いかどうかではなく、病院の実績を見て決めたほうがいい」とお伝えしたいです。実績のある病院は「混んでいて時間がかかるんじゃないか」とか「治療費が高いんじゃないか」とか、皆さん色々と考えたり、悩んだりするでしょう。

 でも、近くの病院に通ってから転院するかもしれないなら、たとえ混んでいても実績がある病院に通ったほうが結局は近道なんじゃないでしょうか。

 確かに費用は少し高いかもしれないけど、最初から実績のある病院に通うことで短い期間で授かれたら、総額としてはかえってかからないように思います。

 僕たちの経験を参考にして、子どもが欲しいと願うカップルが1組でも多く子宝に恵まれたら、それ以上にうれしいことはないな、と思っています。

(構成/荒木晶子 撮影/川田雅宏 企画/後藤美葉)

魔裟斗
格闘家、俳優、タレント、スポーツキャスター。
1979年生まれ。
日本人初のK-1世界王者として知られ、2009年引退後は多方面で活躍中。
K-1 WORLD MAX 2003 2008 世界王者。
生涯戦績は63戦55勝(25KO)6敗2分。