おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 前回から語り手を夫・魔裟斗さんにバトンタッチして、不妊治療を男性側の視点から語ってもらっています。第1回は心さんとの出会いから結婚、魔裟斗さんが不妊治療に本格的に関わろうとするまででした。第2回は、二人三脚で不妊治療に取り組み、無事出産を迎えるまでのお話です。

一緒に診察を受けるのは実はラッキーだった!?

 僕も不妊治療に真剣に取り組もうと決めてから、心の診察中に外で待っていることをやめて、一緒にクリニックに入るようにしました。

 最初はやっぱり、ものすごく抵抗感がありました。そういう場所は女性のものという意識があったし、「なんだか恥ずかしい」という気持ちもあった。

 初めて一緒に行ったとき、中に入った途端に看護師さんから「旦那さんは別室へどうぞ」と言われ、そのまま個室に連れていかれました。精子の採取だったんですが、いきなりだったので訳が分からなくて、「なんだ、何をされるんだ?」と不安になりました。

 精子は家で採取して持っていくこともできて、それまではそうしていたので、病院内にそのための部屋があるなんて知りませんでした。精子は温度などをきちんと管理して保管しないと正確に検査できないらしくて、クリニックの個室で採取したほうが新鮮でいいのだそうです。

 男としてはどんな結果だったのか気になったので、検査の後の診察で「どうなんですか? 僕の(精子)は?」と聞くと、院長先生から「ものすごく元気です!」とお墨付きをもらい、ホッとしました(笑)。

 一度経験してみると、僕の他にも個室に案内されていく人が結構いることが分かったし、「こういうものか」と思いました。あんなにイヤだと思っていたけど、入ってみると案外大したことないもんだな。何でも最初は勝手が分からないから、やりたくないと思うだけなんだな。そう納得できました。

 個室の中はとても清潔な環境が整えられていて、いわゆるアダルトビデオが見られるようになっています。いわば妻公認で、そういう動画を見るわけです。最初こそ戸惑いましたが、2回目からは「ラッキー!」くらいの心持ちで行くようにしました(笑)。

 実は、僕の兄も子どもがなかなかできなくて、同じように不妊治療をしていたんですが、やっぱりクリニックに行くのをイヤがっていました。だから、この話をして「むしろ、ラッキーかもよ?」って勧誘したくらいです(笑)。

 でも、これはきっと男性に限ったことではないですよね。多分、治療を受ける手前で迷ったり、悩んだりしている人は女性にも多いんじゃないかな。実際にクリニックに行ってみれば、同じような境遇の人ばかりで、自分で考えていたよりハードルは高くないんです。僕が証明済みなので、ぜひ一歩踏み出してみてほしいなと思います。

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