おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 今回からは夫・魔裟斗さんにバトンタッチして、男性側の視点から不妊治療への関わり方や子育てなどについて語ってもらいました。第1回は心さんとの出会いから結婚を経て、心さんの決意を知って魔裟斗さんが不妊治療に本格的に関わろうとするまでのお話です。

僕にとって同棲は結婚同然。だから、実は重かった

 心と出会ったのは、僕が20歳の頃。「近くで車が動かなくなっちゃった」と、知り合いから連絡があったので行ってみたら、そこに一緒にいたんです。最初は「矢沢心って誰だっけ?」という感じで、名前もあまり聞き覚えがなかったし、女優さんだということも知りませんでした。

 初対面なので、普通はお互い気を遣うと思うんですが、心は僕に気を遣わせないように話してくれました。僕は人見知りだし、口下手なほうなので、それがすごく心地よかった。今ではもうどんなことを話したのか、全然覚えていないけれど、「気遣いができる、会話の上手な人だな」と思ったことは覚えています。

 それから連絡を取り合うようになり、2人で出かけるようになりましたが、その頃の僕はまだK-1に出る前で、「これからどうやって自分を売り出していこうか」と考えていた時期。とにかく仕事が一番だったので、正直彼女を作るつもりはありませんでした。だから、言葉は悪いかもしれないけれど、心と付き合ったのは成り行きというか、深く考えてのことではなかったですね。

 付き合ってから1年くらいたった頃、「一緒に住まない?」という話になりました。当時、心はストーカーに遭って怖い思いをしていたみたいで、1人暮らしは不安だったようです。でも、昔から僕の中には、「一緒に住む=結婚を前提にする」という意識があったので、この話は「付き合う」ことよりも、ずっと重かった。20代前半で仕事もまだこれからという時期に、結婚まで考えるということですから、本当に悩みました。

 そうして悩みに悩んだ末、将来心と結婚するという決心をして、双方の家にも挨拶に行きました。実際に結婚したのは、それから5年後です。お互いにどういう人間かはもう分かっていたし、僕は27歳、心は25歳になっていたので、「そろそろ結婚する時期かな?」と。今考えると、「まだ若かったかも……」と思いますが、当時は「結婚って、そのくらいの年齢でするもんでしょ」という気持ちがありました。

 心に「生理が来ない」ということは、一緒に住んでいたのでもちろん知っていました。だけど、特にそれが問題だとは思っていませんでしたね。「そういう人もいるんだな」くらいの認識でした。現役時代はとにかく仕事が第一で、それだけで頭がいっぱいだったので、それ以外のことにはあまり関心がなかったんです。

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