おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5才と3才の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。
体外受精や顕微授精に何度もチャレンジするなど、長くつらい治療の日々を乗り越え、待望の赤ちゃんを抱くまでの日々を、振り返って語ってもらいました。前回は、2度目の転院での運命の医師との出会い、2回目の妊娠と流産などについて語ってもらいました。第4回は、流産から再びトライした顕微授精が成功し、出産するまでのお話です。
流産してやめた、二つのこと
流産しても諦めない。そう思ったとき、私は二つのことをやめました。
一つは日記です。それまで、私は家事が終わって寝る前の深夜1時すぎに日記を書くことを習慣にしていました。そこには、検診のこと、先生とどんな話をしたか、どんな薬を飲んで、どんな治療だったか、その治療で体調がどう変わったかなど、そのとき感じた気持ちや夫が言ってくれた言葉などをすべて書いていました。
そして、毎月生理が来ると、「あー、今月もダメだった……」と重い気持ちとともに日記を開き、「ネイルをしたのがいけなかったのかな」「髪を染めたのがダメだったのかな」「移植した日、もっと静かにしていればよかったかな」「重いものを持ってしまったからかな」「動かなければよかったかな」と、授からなかった原因を探していました。何かの原因があったと考えないと、気持ちが持たなかったからです。原因があるのなら、次はそこを直せばいいと思えて、少しラクになれました。
けれど、赤ちゃんの心臓が止まって、ようやく気が付きました。
そうやって、ダメだった原因を探しても前には進めないし、そもそも原因は私の生活だけにあるとは限らない。院長先生も、「流産はお母さんのせいじゃないんだよ。ほとんどは赤ちゃんの側に何らかの原因があって起こるものだから」と言っていました。私にはどうしようもないことだってあるんだ。「あれもダメ、これもダメ」というのは、かえって自分をがんじがらめにしていただけじゃないか。
深夜に日記を書くことで寝る時間が遅くなり、朝起きてもあまり食欲が湧かず、朝食が食べられないということもよくありました。夫からも「健康な生活をしないと、赤ちゃんも来れないよ」と言われていました。
ダメだったことはもう振り返らなくていい。良かったことは振り返ってみてもいいけれど、問題がないなら、何度も見る必要はないよね。それなら、夫の言う通り、早く寝て、健康的な生活をしたほうがいいんじゃない?
そう思って、それからは一切日記を書くのをやめました。
やめてみたら、あら、なんてラクチンなんでしょう(笑)。日が経つとともにちゃんと起きられるようになって、朝食も食べられるようにもなり、「やっぱり、私に必要なかったんじゃん!」と思いました。
もう一つは、妊娠したら読もうと思って保管していた妊婦さん向けの雑誌などを全部捨てたことです。これも、よく考えてみたら、本当に妊娠してから買えばいいことだと気付きました。
全部捨ててみたら、家の中も、気持ちもスッキリ! 妊娠中に役立ちそうな記事を集めることで、かえって自分にプレッシャーを与えていたのかもしれません。