不妊治療に通っていることを会社に伝えよう

Q 不妊治療をしたいけれど、働きながら通院するのは大変ですか?

A 大変ではありますが、仕事は辞めないで。

 働きながら不妊治療をする場合、検査や排卵を促すための注射のほか、着床してからも卵を育てるための注射をしに頻繁に通院する必要が出てきます(クリニックの治療方針等にもよりますが、自己注射などを行い、頻繁に通う必要はないこともあります)。体への負担もありますし、本格的に取り組もうとすればするほど、仕事との両立に悩むようになるでしょう。

 でも、仕事を辞めてしまったら、今度は不妊治療にかかる費用を捻出することが難しくなります。「じゃあ、どうすればいいの?」というジレンマに陥ってしまうわけですが、残念ながら、これが今の日本で不妊治療をしようと思ったときにぶつかる現実です。

 とはいえ、先立つものがなければ治療ができず、子どもを授かるチャンスもなくなってしまうわけですから、やはり仕事は辞めないほうがいいと思います。ではどうすればいいのか。私は会社に相談するのがいいと思います。「会社には言いにくい」と内緒で通院しているという話もよく聞きますが、言わないだけで実は不妊治療をしている人はたくさんいます。

 私の友人には交渉して部署を変えてもらった人もいるので、話せば理解が得られることもあるはずです。仕事の内容が変わることでやりがいがなくなるなどの不満も出てくるかもしれませんが、子どもを授かったらまた仕事とは別の世界が広がる面もあります。本当は、社会全体にもっと不妊治療が知られるようになって、不妊休業制度ができ、堂々と休めるようになるといいなと思うのですが、そのためにも、声を上げていくことが大切だと思います。

Q パートナーが病院に行きたがらないのですが、どうすればいいでしょうか?

A 男性は行きたがらないことを前提にして方法を考えましょう。

 男性にとって、病院へのハードルは女性が思うよりも高いようです。不妊治療クリニックは女性が多くて入りづらいと思いこんでいたり、「もしも自分が原因だと言われたらどうしよう」と恐れる気持ちがあったりすると聞きます。でも、子どもは1人では授かれないですし、2人の子どもなのですから、パートナーには協力してほしいですよね。

 そこで、伝え方をちょっと工夫してみましょう。矢沢心さんも連載でおっしゃっていましたが、「あなたの子どもがほしい」というのはキラーワードだと思います。「この人は、自分をこんなに愛してくれているから、自分の子どもを欲しいと言っているんだ」と思わせるのです。

 逆にNGなのは「私にはなんの問題もなかったんだから、あなたが検査に行ってよ」という言葉。男性側に原因があるような言い方は、それを恐れる気持ちがある男性にはかえって逆効果です。

 さらに、不妊治療クリニックは、内装がピンク色だったりして男性が入りづらいと感じる産婦人科とは違い、ふつうのクリニックと同じような雰囲気だということ、実は女性ばかりではなく男性もたくさん来ているということも伝えて、安心させてあげましょう。

 実際に男性が病院へ行くのも、最初に行う精子検査などのときと採精のときの2回くらいだと思います。ずっと一緒に通院してほしいわけではなく、時間的な負担は少ないのだということも伝えると、ハードルも下がるのではないでしょうか。

(取材・文/荒木晶子、日経DUAL編集部 イメージカット/iStock)