ステップアップしていくほどにかかるお金も増えていく

―― 不妊治療においては、夫婦の仲やコミュニケーションが大切です。

矢沢 お茶会では、夫婦のコミュニケーションは取れていて、2人の子どもが欲しいと願っている人が応募してくれているという印象です。

―― 不妊治療をするうえで、妻が夫に望むことは何でしょうか?

矢沢 やっぱりお金は大事です。

―― お金ですか。そんなにかかるのでしょうか?

矢沢 うーん、もちろん不妊治療の段階によって違いますが、そう思って治療に臨んだほうがいいですよね。ステップアップしていけば、それだけお金も追加でかかってきますから。自治体の助成金も回数制限がありますし、そもそもすべて補助してくれるわけでもない。現実的にお金がないと、体外受精や顕微授精ができなくて、いつまでも先に進めないということにもなってしまいます。

 そして女性は、不妊治療中は様々な制約があって、仕事と並行して進めるには多くの障害があります。できるなら仕事を休んで妊活に専念するのがベストではありますが、そこまでしなくとも、パートナーがしっかり働いて生活費と治療費を確保してくれるというのは、いざというときの安心感につながると思います。

魔裟斗 僕はあえて、どれくらい治療費がかかっているのかは聞かないようにしていました(苦笑)。そのうえで、「心が好きなように、後悔しないようにやってほしい」というのが基本スタンスでしたね。

矢沢 私も、何にいくらかかったかを書き出して、相場より高過ぎないかどうかなどチェックしていました。一応、夫にもちょこちょこ話していたと思うのですが、多分聞いてなかったですね(苦笑)。でも費用がかかるとはいえ、何にどれだけお金をかけるのかという問題だとも思います。

―― 優先順位の問題ということでしょうか?

矢沢 例えば、毎年旅行に行っていたのをやめて、そのぶんを治療にあてる方法もある。今は子どもが欲しいということが第一優先なら、家計の中からどうやって捻出するかが大事。そこは夫婦の間でよく話し合ってほしいですね。

 あとは、病院によって成功したら成功報酬という形で料金がかかるところと、毎回診察を受けたり、採卵したりしたら必ず料金がかかるというところがあるので、費用についてはきちんと調べたほうがいいですね。

―― 金銭面以外で、夫にできることは他に何があるでしょうか?

矢沢 寄り添ってほしいですね。話を聞いてほしいと思ったときには隣にいてほしいし、こっちから求めるタイミングではちゃんとキャッチしてほしい。夫はそういうところはキャッチしてくれていました。グイグイ来られるとちょっと息苦しいし、一方で不妊治療について無関心だと義務になってしまうので、そのバランスが難しいかもしれませんが。

―― 繊細な気持ちをキャッチしてもらえないと、妻側は苦労するかもしれませんね。

矢沢 あとは、やっぱり最初に病院まで一緒に来てもらうことが大事だと思います。その病院に自分の奥さんと未来の子どものことを託すことになるわけですから。パートナーが一緒に病院に来てくれないという話もよく聞きますが、子どもは妻だけの子どもではなく、夫の子どもでもあります。それに、不妊は女性側が問題じゃないケースもありますから。

魔裟斗 別に毎回必ず一緒に行くってわけじゃないんです。最初にちゃんと挨拶して、先生の顔を見て話を聞く。僕の場合は、紹介から入ったので最初から院長のことを知っていたわけですが、知っている人が妻を見てくれているという安心感は全然違いました

矢沢 奥さんがお世話になるのはどんな病院で、どんな先生が診てくれて、最初にどういうことをするのか。それを夫が知っているかいないかだけでも、ずいぶん違うと思います。

(構成/荒木晶子 撮影/鈴木愛子 企画/後藤美葉)

魔裟斗
格闘家、俳優、タレント、スポーツキャスター。
1979年生まれ。日本人初のK-1世界王者として知られ、2009年引退後は多方面で活躍中。
K-1 WORLD MAX 2003 2008 世界王者。
生涯戦績は63戦55勝(25KO)6敗2分。
矢沢心
女優・タレント
1981年東京生まれ。1997年デビュー。
夫である魔裟斗さんは、日本人初のK-1世界王者として知られる。
著書に『ベビ待ちゴコロの支え方』(主婦の友社)など。
日々の暮らしをつづったオフィシャルブログも人気。
「コロコロこころ」https://ameblo.jp/yazawa-shin/