おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 これまで不妊治療を経験した妻として矢沢心さんから、男性側の視点で魔裟斗さんから、10回にわたってお話を伺ってきました。今回からは日経DUALの羽生祥子編集長を聞き手として、ご夫婦一緒に対談という形で語ってもらいます。第1回のテーマは不妊治療について語ろうと思った理由、そして連載後の周りの反応などについてです。

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魔裟斗さん(左)と矢沢心さん(右)。2人とも、穏やかな笑顔で対談に臨んでくれました
魔裟斗さん(左)と矢沢心さん(右)。2人とも、穏やかな笑顔で対談に臨んでくれました

子どもを授かるということは、とてもありがたいこと

日経DUAL編集長 羽生祥子(以下、――) まず、ここまで連載を終えて、今どんなご感想をお持ちになられていましたか?

矢沢心さん(以下、矢沢) そうですね。普段あまり言葉にしないことを文字にしたことで、心で思っていたことがこんなにあったんだなと、感じました。そして、やっぱり不妊治療の戦いは長かったなとも思いましたね。

魔裟斗さん(以下、魔裟斗) 僕は2度目の転院後、一度着床したのに流産したとき、諦めようと思ったんです。僕の中では、もういいかと感じたのですが、あそこで諦めなくて本当によかったなと、改めて思いました。もしそうしていたら、2人の娘は今いなかった。あのとき諦めなかった子どもがもう5歳になって、そのおかげで、僕は幼稚園の運動会にも参加できました。本当に、心が諦めないでくれたことに感謝です。

―― 今回は、夫婦お二人で交互に不妊治療の経験について語るという形式でした。お互いのパートをお読みになって、いかがでしたか?

矢沢 私たち夫婦は、幸いなことに子どもを授かることができました。そのことは、決して当たり前のことではなく、とてもありがたいことなんだと改めて思いました。私には「私たちの子どもを絶対に産むんだ」という決意があったんですが、やはり早い段階で不妊治療に踏み切った判断や、夫が私の好きなようにさせてくれたことは正しかったんだなと。途中からは夫も病院に付き添ってくれたり、検査にも協力してくれたりして、やっぱり子どもって、夫婦のどちらか1人だけじゃ授かれない。夫婦で寄り添い合った、その結果というか、証が子どもなんだなと、強く感じました。

魔裟斗 もちろん当事者なので、心が語っていることはすべて知っているんですが、改めて文章として読むと、あの頃は本当に大変だったけど、今となっては懐かしい思い出だなとも思いました。ただ、僕は基本的にポジティブなんで、もし結果的に子どもができなかったとしても、「あそこでああいう努力をしたから、今の自分がある」と考えていると思います。すべての経験が、今の自分につながっていると感じているので。

矢沢 治療をしている間も、「もし子どもができなくても、それはそれでいいよね」「子どもにかけるぶんのお金で旅行に行ったり、自分たちの楽しみにかけられるから、楽しいんじゃない?」ということはずっと話していました。私は「絶対に子どもを授かる」という強い気持ちを持っていたんですが、一方で夫がそんなふうに言ってくれるのはありがたかったです。どこかに抜け道がないと精神的に参ってしまうし、こだわり過ぎるのも良くないとも思っていたので。

―― お二人ともポジティブですね。

矢沢 私は、本当はネガティブなんです(笑)。でも、夫のポジティブに負けないように、私もポジティブになろうと思いました。流産の経験など、不妊治療中に期待し過ぎてつらかったこともあって、考え方を変えないと苦しいなと思って。

魔裟斗 僕がポジティブなのは、やっぱり格闘家としての経験が大きいのかもしれません。負けることなんて考えていたら、戦えないですしね。ネガティブになっても何もいいことはない。もちろん、たまには落ち込むこともありますけど。

―― そういうときはどうするんですか?

魔裟斗 僕の場合、ネガティブになるのは大体疲れているときなんです。体の状態に精神が引っ張られるというんでしょうか。だから、そういうときは寝るのが一番の解決方法ですね。次の日、元気になって考えると、「なんだ、悩む必要もないことじゃん」となります(笑)。

矢沢 そうそう、本当にそんな感じです。

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