5歳と4歳の子どもたちを育てながら、デジタルマーケティング会社で室長として働く多香実。仕事も子育ても満喫している今どきのワーママのようだが、実際は子育てをほぼ一人でやらなければならない“ワンオペ状態”だ。

できた夫、褒め上手な妻、中学受験に合格した娘・・・。非の打ちどころがないはずの円満夫婦が、突然の離婚に。原因は、妻である千恵が、パパ友のことを好きになってしまい浮気をしたことだという。初夏の夜、千恵と店で落ち合った多香実。千恵のこれからの方針を聞くことになるが・・・。
『さしすせその女たち』  今回の主な登場人物
 ◆米澤多香実(よねざわ たかみ) 39歳/デジタルマーケティング会社「サンクルーリ」ソーシャルマーケティング部クライアントオペレーション室 室長
 ◆米澤秀介(よねざわ しゅうすけ) 40歳/食品メーカー営業職 課長
 ◆米澤杏莉(よねざわ あんり) 5歳/みゆき保育園年中クラス
 ◆米澤颯太(よねざわ そうた) 4歳/みゆき保育園年少クラス

 ◆秋山千恵(あきやま ちえ) 39歳/多肉植物の栽培・販売店パート勤務
 ◆秋山茂樹(あきやま しげき) 47歳/銀行員
 ◆秋山希(あきやま のぞみ) 12歳/私立女子中学に合格

「茂樹さん、泣いてね。別れないでくれって。離婚だけはしたくないって」

 それもまた驚きだった。そんな夫がこの世にいるなんて信じられなかった。秀介だったら、頭に血がのぼって横っ面を引っ叩くぐらいのことはするだろう。自分のことを棚に上げるのは、秀介の得意技だ。

「それから、まあいろいろあって、結局その人とは別れることになってね。お互い元のさやにおさまったの」

 こうして言葉にしてしまうととても簡単だけれど、「いろいろ」のなかには、本当にたくさんの「いろいろ」なことがあったのだろうと、ワインで頬を染めた千恵を見ながら思う。当人たちにしかわからない感情の波は、それこそ修羅道だったに違いない。

「茂樹さんも喜んでくれて、わたしも反省してね。もう、二度とそういうことはしないって心に決めたの。茂樹さんとってもやさしくしてくれて、もう二度とこの人を悲しませるようなことはしないって誓った。それからは、茂樹さんのことを第一に考えて生活してきた。あ、べつに我慢してそうしてたってわけじゃないのよ。本当に幸せな日々だったの」

「……うん」

「でもやっぱり無理だったみたい。茂樹さんはずーっとそのことが頭のどこかにあったんだと思う。どうしても許せなかったんだろうね。8年間も悩んでいたなんて、わたしにはぜんぜんわからなかった」

<次のページからの内容>
・ 「わたしにはなにも言う権利はないわ」
・ 「茂樹さんには感謝しかない」
・ 「やだあ、なんで多香ちゃんが泣くのよ」
・ 「希を巻き込んで迷惑かけてごめんね」
・ 「愛していたからこそ、過ちを許せなかった」
・ バッグに忍ばせた『子連れ離婚』の本
・ 生活費13万円の代わりに秀介と別れるか?

次ページから読める内容

  • 「わたしにはなにも言う権利はないわ」
  • 「希を巻き込んで迷惑かけてごめんね」
  • 愛していたからこそ、過ちを許せなかった
  • 生活費13万円の代わりに秀介と別れるか?

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