子どものやることなすことすべてに口出ししたり、手出ししたりしていませんか? よかれと思ってやっているかもしれませんが、実はそれこそが子どもの成長する機会を奪い、自立して生きていく力を育むことの阻害要因になっているかもしれないのです。

 この特集では、子どもに対する過干渉育児を「カーリング育児」と定義し、そこから脱却するための様々なノウハウをご紹介していきます。教育・心理関係の著書が100冊を超える、明治大学文学部の諸富祥彦教授は、「特に女の子の第一子は過干渉になりがち」と話します。「カーリング親」を脱却し、「見守り親」になるにはどうすればいいのか、きょうだい構成による関わり方のポイントを交えて教えてもらいました。

【先回りし過ぎ? これからは「カーリング→見守り」育児 特集】
(1) 「過干渉育児」の恐ろしい弊害 子育ては根気が一番
(2) 『嫌われる勇気』著者「“見守る勇気”で親も楽に」
(3) “ママと長女”は要注意 きょうだい育児もリスク ←今回はココ
(4) 子育ても部下育ても原則は同じ「信じて、待つ」
(5) 編集部実践! カーリングママが“見守りママ”へ
(6) 白井健三を育てた極意「手を離しても心は離さない」

母親から第一子の女児への過干渉が一番多い

諸富祥彦教授
諸富祥彦教授

 「パパは娘に甘々。ママは息子にベタベタ」

 よくあることですが、そんな親子関係が問題視されることもあります。ところが、「そういうことはあったほうがいいのです。むしろ、親が同性の子に厳しくなり過ぎることのほうが要注意です」と、明治大学文学部教授の諸富祥彦さんは指摘します。

 「特に女の子の一人っ子や、下にきょうだいのいる長女など、第一子が女の子の場合は気を付けてください。お母さんは娘を自分のコピーのように思ってしまいがちで、思い通りにコントロールしようとするため、母から娘への口出しや過干渉が一番多いのです」

 一人っ子は親の視線を一手に引き受けてしまいますが、実は、きょうだいのいる第一子も、下の子が生まれるまでは一人っ子。親の愛情を独占できる反面、期待も大きく、そのぶん干渉も増えると諸富教授は話します。

 「娘を自分と同一視し、自分がしたかったことやできなかったことを娘にさせようとするお母さんは少なくありません。その過大な期待に応えようとして、娘は自分らしく生きることができなくなってしまうのです。お母さんは、一人っ子や年下のきょうだいがいる長女に過干渉になっていないか、期待をかけ過ぎてはいないか、時々振り返ることが必要です」

 教育カウンセラーとして数々の講演会やワークショップを行う諸富さんは、娘を持つお母さんたちを対象にした講演会では、ある詩を叫んでもらうのだそうです。

 娘は娘。私は私。

 娘は私の期待に応えるために生まれてきたわけではない。

 これは「ゲシュタルトの祈り」と言われる詩の一部を、諸富さんが母・娘バージョンに変えたもの。「ゲシュタルトの祈り」は、ユダヤ人の精神科医、フレデリック・パールズが、自らが始めたセラピー療法「ゲシュタルト療法」の思想を盛り込んで作った詩です。

 もともとは、「私は私のために生き、あなたはあなたのために生きる。私はあなたの期待に応えて行動するためにこの世に生きているのではない。そしてあなたも、私の期待に応えて行動するためにこの世に生きているのではない」という詩で、自分が自分の人生の主人公であることを表現している、と諸富さん。

 「もしかしたら、過干渉になっているかも?」と思い当たるところがある人は、「ゲシュタルトの祈り」母・娘バージョンを唱えてみるといいかもしれません。

 こうした過干渉は、第一子に限った話ではありません。共働きパパやママは待てないことが多い、と諸富さんは言います。

<次のページからの内容>
● いくらでも子どもの決断を待つ外国人、待てずに誘導する日本人
● 子どもが自分の人生を自分の力で生きるためには「自己選択」が欠かせない
● イライラがスーッと消えていく3つの方法
● きょうだい育児と一人っ子、それぞれのメリットとデメリット
● 下の子どもが最大のメリットを得るのは「4歳差以内のきょうだい」
● 「見守る」ことと「ネグレクト」の違い
● 子育てについての夫婦の考え方は、違っているほうがいい