子どものやることなすことすべてに口出ししたり、手出ししたりしていませんか? よかれと思ってやっているかもしれませんが、実はそれこそが子どもの成長する機会を奪い、自立して生きていく力を育むことの阻害要因になっているかもしれないのです。

 この特集では、子どもに対する過干渉育児を「カーリング育児」と定義し、そこから脱却するための様々なノウハウをご紹介していきます。第1回は、教育・心理関係の著書が100冊を超える、明治大学文学部の諸富祥彦教授と、ベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)の共著者で、アドラー心理学者・哲学者の岸見一郎さんに、「カーリング育児」がもたらす弊害について話を聞きました。

【先回りし過ぎ? これからは「カーリング→見守り」育児 特集】
(1) 「過干渉育児」の恐ろしい弊害 子育ては根気が一番 ←今回はココ
(2) 『嫌われる勇気』著者「“見守る勇気”で親も楽に」
(3) “ママと長女”は要注意 きょうだい育児もリスクが
(4) 子育ても部下育ても原則は同じ「信じて、待つ」
(5) 編集部実践! カーリングママが“見守りママ”へ
(6) 白井健三を育てた極意「手を離しても心は離さない」

過干渉育児は子どもの主体性を損なう

 子どもって、手がかかる生き物――。

 そんなふうに思っていませんか? 実際問題、そうかもしれません。自分で朝起きることもできない、ごはんを作って、自分で食べることもできない。洗顔も歯磨きも着替えも、靴を履くことすら、私がやってあげている…。そんなご家庭もあるのではないでしょうか。

 「親は子どものためと思ってやっているかもしれませんが、結果として子どものやる気や自主性、自立心、能力開発の機会まで奪ってしまっていることに気付いていません。子どもは何もかも親がやってあげなければいけない存在ではないのです

 こう語るのは、明治大学文学部教授で、『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版)など教育・心理関係の著書が100冊を超える、諸富祥彦さんです。

 「2020年の教育改革などでも、『主体性のある学び』の大切さを訴えていますが、親がなんでもやってしまう過干渉育児は、まさにその主体性がない子どもを育ててしまっているのです。本来、自己選択することこそが人生のはず。過干渉で育てられた子どもは、大人になっても自分で職場も結婚相手も何も決められない、自分の頭で物事を考えられない人間になってしまう、そんな恐ろしいリスクがあるのです」

 それでは、子どもをほったらかしにすればいいのでしょうか? 諸富教授は「それも間違っている」と続けます。