メンバーが自主的に動くのに寄り添う管理職でありたい

黒木 私は二度、育休を取っているので、休んだ分だけ同期に数字を抜かれたり、制約がある中で思い通りにできなかったりと、悶々としていた時期がありました。そのときに、ある人から「これから先30年、40年働くような人生の中で、ほんの1、2年じゃないか」と言われて。気持ちがふっと軽くなり、とてもありがたかったです。共感して勇気づける気持ちを、私も部下に伝えていけたらなと思います。

−− この先、女性管理職はどんどん増えていくと思うのですが、どんなふうに働いていきたいとか、理想の管理職像みたいなものはありますか?

矢島 管理職になると“女性”管理職って言われるので、男性、女性なんてつかずに、ただ管理職であればいいなと思います。女性はまだまだロールモデルが少ないから意識してほしいと言われることもありますが、その意識すらなくなればいいなと。

篠原 上の世代の方たちは、男性になりきって生き抜いた時代だと思うんです。母であることや女性であることを犠牲にすることもあったかもしれない。でも、今の若い子たちがそうなりたいかというと、ちょっと違うと思います。グローバルに見ると、エグゼクティブウーマンは日本よりもはるかに多いけど、性差なく働いている。男女問わず、若い男の子たちも含めて全員に対してロールモデルになって、リーダーシップを発揮していきたいと思います。

湯本 話題の『マネジメント3.0』を読んだのですが、今まではリーダーとして人を引っ張っていくことが求められていたのが、これからは一人ひとりがリーダーで、管理職の役割は部下の判断に寄り添いフォローすることだということを学びました。そのほうがみんなの満足感も高いし、仕事がいきいきできますよね。もちろん管理職として、時に自分がリードしていくことも必要ですが、それぞれが自主的に働くのをサポートする。そういうやり方が自分にも合っていると思っています。

ようやく「普通っぽい」子たちが入ってきた

黒木 私がいる建設業界は、改革は随分進んできているとはいえ、まだ古い体質も残っていて、どこか体育会系気質もあります。そんな中でも、下の世代の女性たちにようやく「普通っぽい」子たちが入ってきたなと思います。例えば、ファッション一つとってもダークカラーのスーツではなくて明るい色を着たり、ネイルをきれいにしたり、髪色が明るかったり。よその業界だと普通だと思うんですけどね(笑)。今までのような、男性に合わせなければ生き残れなかった世界ではなくて、裾野を広げていけるような環境をつくっていきたいなと。女性が増えると、女性同士って雑談が好きだから、そうやってリラックスした中で新しい案が出ているのも見かけるし、いい傾向だなと思います。それに人数も必要だと思うので、まずは辞めないようにすること。結婚しても続けられる環境を私たち世代が作っていかなきゃと思っています

篠原 復帰した若い子たちの中には、仕事より子どものほうが大事という人もいて、ポテンシャルがあるのにもったいないと感じることはあります。以前は、自らがこれからの世代のロールモデルにならなきゃという気持ちが強く、結局「みんなが目指せる姿を」と考えて「無理しない」「頑張り過ぎない」と自分の成長にセーブをかけていたんです。今では自分のより一層の成長を考えるようになりました。でも、みんながみんな必死に頑張る必要はない。キャリアをストップしている子を励ましつつ、色々な働き方があることへの理解を深めていきたいなと。そのために最近、篠原会というのを作ったんです。

一同 芸能人みたい!

篠原 ママもいればパパもいて、年齢も20~50代と様々。一次会は仕事のことからプライベートまで何でも話して、二次会はカラオケでストレス発散です。立場が違う人への理解を深めながら、これからの世代が楽しく多様に働けるような雰囲気作りができたらと思っています。

−− それ、ぜひ入ってみたいですね(笑)。最後に、今後もまだまだ仕事人生は続くと思いますが、10年後、20年後の自分の姿を想像して、どうありたいですか?

矢島 20年後なんて孫もいるんじゃないかなぁ。自分がどうありたいかというのは難しいですけど、働いてはいたいかな。家庭も仕事もハッピーでいられたらなと。家庭では自分の努力も必要ですし、仕事の面ではすごく変化のある10年、20年だと思うので、その中で必要とされ続けるための努力はしたいなと思います。

湯本 10年後はまだ子どもも小さいですが、違うステージにはいたいですね。さらに20年後は、今の仕事とはまったく別のことにもチャレンジしてみたいなと思います。100年人生と考えたら、まだまだ元気で働きたいですね。

(文/宇野安紀子 写真/坂斎清)