「俺を困らせろ」「最後は俺の責任」

黒木 私は店長という立場になって、向こうから声をかけてもらうことも多く、恵まれた立場ではあるんですけど、若いころはかなり苦労しました。お酒が好きなので、飲みの席にはよく顔を出しましたね。今はパワハラと言われちゃうので、声をかけにくいんですけど(笑)。あとは、業務上、電話のやり取りがとても多いのですが、電話を受けたらいきなり仕事の話から入るのではなく「あれ、お風邪ですか?」と変化に気づいて一声かけてから本題に入るようにしています。できるだけお店にかかってくる電話を一番に取るようにもしています。そうすると、自分宛ての電話じゃなくても色んな人と会話できるじゃないですか。そうやって存在を印象づけることで、仕事がうまく回り始めたりもしましたね。

−− 社内を回り道したり、電話番を積極的に買って出たり、面倒に思える一手間がチャンスになると。

黒木 そうですね。また、今は部下から「飲みに行きませんか?」と言われたら、絶対に断りません。ただ、うちは男性が多い職場で一対一はちょっとまずいので、もう一人誘って3人で行くことが多いです。

湯本 課のリーダーになると、自分の部署以外の人と話す機会も増えてくるので、全く知らない人といきなり仕事の話をするよりは、雑談くらいできるほうがいいですよね。今は復帰間もなくてあまり参加できていないんですが、社内イベントにも積極的に顔を出し、ネットワークを広げていきたいなと思っています。

−− 職種的にまだ男性社会という職場もあると思うのですが、女性であることを不利に感じたことはありますか?

篠原 会議の中で女性は私一人ということもよくありますが、不利だと感じたことはないです。むしろ自分は女性であることを意識していないのに、周りの気遣いがちょっと引っかかることはあります。例えば、育休明けで復帰したときに「早く帰ったほうがいいよ」と言ってくれるのはありがたいんですが、共働きだし、私だって残業したいのにと思っていました。

黒木 もし嫌なことがあっても、最近は、それは性差の問題だけじゃなくて個人差の範疇かなと思っています。逆に女性だからということで優遇されていることはありますよ。例えば管理職候補者研修の機会にしても、男性は課長になるとき、こうした長期研修を受けることはないので。

湯本 女性の執行役員比率は15%まできていて、男女関係なく同じようにチャンスは与えられていると感じています。昔は大事なことが「タバコ部屋会議」で決められることがあり、女性はそういう話に関われることが少ないという話がありましたが、当社は全社禁煙となり喫煙室がなくなったため、「タバコ部屋会議」は開催されません(笑)。禁煙は健康経営の一環で始まったことですが、色々な面で男女の垣根がなくなっていると感じています。

−− これから皆さんは、上司として人を育てていく立場になっていきますが、自分の上司に助けられたことや、厳しい言葉をかけられ今の自分に役立っているといった思い出はありますか?

矢島 今の上司は困ったとき、相談すると必ず道筋を示してくれます。何でもすぐに相談するのはよくないですが、いざというときにサポートしてくれる安心感があるので、臆せず新しいことにチャレンジできます。

湯本 上司に「最後は俺の責任になるんだから、気にせずやれよ」と言ってもらえたときは、思いきってトライしていいんだと安心したことを覚えています。私もいつかそんなふうに言えるようになりたいなと。

篠原 私が一番印象的だったのは「俺を困らせろ」の言葉。「当たり前のことは普通にやってほしいけど、もっと困らせるくらい大きなことやワガママなことを持って来い」と言われ、思う存分チャレンジできました。

−− 実際に困らせたことはあったのですか?

篠原 ありました。そのときは「そう、これだこれ! こういうのを待ってたんだ。さあ、どうしていこうか?」と、喜んでくれていました(笑)。

ダイキン工業 空調営業本部設備営業部の篠原葵さん
ダイキン工業 空調営業本部設備営業部の篠原葵さん