(日経DUAL特選シリーズ/2018年12月収録記事を再掲載します。)

 日経DUALでは「待ったなしの少子化問題」と、内閣府も推進する「ワーク・ライフ・バランスを保ちながら生産性高く働くための働き方改革」という2つの視点で優秀な企業を応援する取り組みとして、2回目となる「共働き子育てしやすい企業グランプリ 2017」調査を実施しました。詳細はこちらの特集をご参照ください(「2017年 共働き子育てしやすい企業ランキング特集」)。第3回も、厚生労働省が公開する「女性の活躍推進企業データベース」サイトに掲載されている情報を基に日経DUALが選定する企業への調査協力依頼に加え、「わが社こそは」と手を挙げて調査にご回答くださる企業を一般公募します!!

 一般公募のスタートに合わせて、「共働き子育てしやすい企業」にまつわる最近の動きについて3人の識者にお話いただきます。この記事では、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事で、東レ経営研究所・上席シニアコンサルタントの塚越学さんに「働き方改革」「女性活躍推進」「人材不足倒産」などについて話を伺いました。

【調査への参加申し込みはこちら!】
本調査の第1次締め切りは終了しました。早々にご応募くださった皆様、心から感謝致します。

現在、第2次申し込みを受け付け中です。調査へのエントリーをご希望の企業のご担当者は、下記のフォーマットに必要項目をご入力ください。日経DUAL編集部から、順次、メールで調査表をお送り致します。

調査表をご返送いただく締切日は、2019年1月31日(木)です。

皆さまのご応募を心よりお待ちしております。
https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/C030337mZ.html

【日経DUAL「共働き子育てしやすい企業ランキング」絶賛公募中!】
(1) 「僕は変わった、職場は変わらない」男性は葛藤中
(2) 言葉を知らなくても経営者が必死なら正解に着地する ←今回はココ
(3) 「豊かな生活」という本来の目的を忘れていないか
(4) 男性も「マミートラック」を受け止める覚悟を

働き方改革関連法が施行されると、変化は起きる?

日経DUAL編集部(以下、――) 2017年は、「残業しなくても残業代がもらえる」など働き方改革の分野で先進的な施策を進めてきたSCSKがグランプリを受賞しました。

塚越さん(以下、敬称略) SCSKは、両立支援からではなく、働き方改革から始めて、その結果、両立支援もうまくいったという正攻法ですが、日本では珍しいケースです。

 多くの日本企業では、長時間労働を中心とした働き方は変えずに、両立支援制度だけ運用しようとするので、制度利用しにくいし、利用したら主流の人事コースから外れてしまう傾向が強いです。よって、制度利用する人は長時間労働ができない一部の人だけになりがちでした。

―― 2019年4月から働き方改革関連法が施行されると、何か変化は起きるでしょうか。

塚越 70年ぶりの改正です。これまで、時間の上限がある中で仕事をしたことがあるフルタイム勤務者は、ほとんどいないと思います。法律が変わったからといって、人間の習慣や取引慣行は急に変わったりはしません。業務の質と量の考え方が従来と同じままであれば、たぶんみんな最初はしんどいと思います。そこで安易にサービス残業が横行するとブラック企業の仲間入り。これを適法に収めようと試行錯誤していく、「24時間対応はやめよう」と取引慣行を変えたり、業務の量を変えたり、質を変えたりできるようになる。ルールが変わったらプレースタイルを変えざるを得ない。仕組みが変われば人間は行動を変え、行動が変われば意識も変わっていける。仕組みを変えずに意識啓発施策だけしていた従来より、変化は出てくると思います。

 最初の数年は政府は取り締まりを厳しくするでしょうが、ブラック企業入りしないようにとネガティブに対応をするのでなく、今後、働き方改革からちゃんと取り組み、生産性を上げていけば、ぐんと伸びるという経営上ポジティブに対応することも大切です。先んじて働き方改革を推進している企業では成果が出始めるでしょうから、来年以降の調査では大きな変化があるかもしれませんね。

働く人から見たらダブルパンチの「働き方改革」が圧倒的に多い

塚越 実際、SCSKの残業時間を減らした分の残業代を賞与で返すという働き方改革をまねする企業をこの1~2年で、いくつも見かけるようになりました。

 

残業代を頼りにして生活する社員からすれば、無理して定時内で仕事を収めるより、自分のペースで自分の満足が行くまで仕事をして、さらに残業代までもらえるなら残業やりますよね。反対に、働き方改革で残業時間が減ると残業代まで減ってしまい死活問題です。また、企業側からしたら、景気はよくなってきているので、本来であれば人件費削減よりも、短い時間で成果を上げて生産性をアップする方針を取るほうが企業にとってプラスのはずです。なので、働き方改革を推進する経営者が「働き方改革は残業時間の削減が目的ではない、生産性向上が目的だ」と社内でメッセージを発信している企業もよく見ます。しかし、時間と対価が紐づいたまま推進すると、残業時間を削減したら残業代まで削減され、働く側の従業員からすると「結局、働き方改革で人件費を削減しようとしている」と経営者が意図していない方向でネガティブに解釈されてしまう。従業員にとって「定時内に仕事を終えるために忙しくなるし、残業代は減るし、ダブルパンチで『働き方改革っていったい何なの?』」となってしまう。実際には、そういう企業のほうが圧倒的に多い印象です。

 よって、残業時間削減を達成できたらその残業代分を賞与で還元するなどして「残業時間削減=人件費削減、ではない」と社員に示す方法は効果があると思います。

 人は自ら体験して「これはいい」と実感できたら続けます。子育て中かどうかにかかわらず、残業時間削減する働き方がいいことだと社員に身をもって体感してもらえばいい。いつも遅くまで仕事をしていた人が定時やプレミアムフライデーで15時に会社を出る。外はまだ明るい。体が楽。仕事帰りにスポーツができた、映画が見られた、おいしいものが食べられた、勉強ができた、早く寝られた。そして翌日調子がいい。仕事の能率がより上がる。こうした体験をして、良さを実感してもらって習慣付ける。体や脳がこうしたことを繰り返し体験したら、定時に帰れるための働き方の工夫を始め、長時間労働の働き方には戻れなくなるものです。企業はそのために投資する、というイメージですね。SCSKのように働き方改革から取り組む先進企業は実際にいくつも見かけるようになりました。