親の仕事に振り回されていた。でも働く母が大好きだった夫

―― モモさんのお宅では、夫の考え方が、共働き育児に悩むモモさんの気持ちを楽にさせたり、モノの見方を変えるきっかけとなっているようですね。両親も共働きだったそうですが、どんなふうに育ったのでしょうか。

モモ 夫の母はもう亡くなっているのですが、私は共働きを続けるうえでとても義母に助けられています。

 夫は3人の子ども以外に、多くの生徒を抱えている働くお母さんに育てられ、仕事のために夕飯の時間が一定でなかったり、朝ごはんは大抵子どもたちが自分で作って食べていたりしたそうです。だから、彼は親の仕事に子どもが振り回されていることに免疫がある。むしろ、女性も仕事をしているのがいいことだと思っていて、子どもを生きがいにすることを嫌がって、私にも「子どもと夫を生きがいにしてくれるな」と言います。

 夫は今でもお義母さんのことをとても大切に思っています。玄関での出迎えや誕生日会もなかったそうなのですが(笑) 一緒に過ごした時間が短くとも、強い絆があることに救われます。お母さんが自分の好きな仕事をしていてキラキラ輝いているのがうれしかったそうです。

―― お母さんが働くことをポジティブに受け止めていたんですね。

母親も働くことが当たり前になるように、好きだから仕事をしていると伝えている

モモ 夫が言うには、義父は学校の教師で部活もあったため、長い休みは取れず、義母も仕事で忙しかった。だから、どこか一緒に出かけたというう記憶がほとんどないみたいなんです。一緒に出かけると娘と一緒に初めてばかりで驚きます(笑)

 でも、しつけはすごくキチンとしている家庭で、しっかりと愛情をかけられている育ちの良さを、一緒に暮らしていてよく感じます。「仕事をしています、忙しいです、だから寝る時間やいろんなことが乱れます」という生活だったとしても、愛情は伝えられるし、子どもも親のことを好きなんだなということを夫の経験からものすごく感じます

 私たちはどれだけ手をかけたかが愛情、という世代に育てられていますが、実際には、一緒にいる時間が短くても、その間にどれだけ真剣にコミュニケーションを取ったのかが大事なのだと思います

 娘は2歳になり「親が仕事でいない」ということが分かるようになってきました。休日に仕事が入り、シッターさんをお願いすることもあるのですが、そんなときも「仕事に行かなきゃならない」とネガティブな言い方ではなく、「ママもパパもお仕事が大好きなの」とポジティブに伝えるようにしています

 そうすれば、娘たち世代は「うちもママは働いていたよ。当たり前だよ」というマインドになるでしょう。男の子たちも自分が家庭を持ったら、大変なときはシッターさんやヘルパーさんをお願いしてもいいという考え方となり、それによって奥さんが救われるのではと思います。

 夫はまさにそういうマインドの持ち主です。彼をそんなふうに育ててくれた義母に、私はとても感謝しています。男の子のママにはぜひ、「皆さんが完璧にすると、20年後、30年後にお嫁さんが大変な思いをするので、そこそこでお願いします」と言いたいですね

(取材・構成/日経DUAL編集部 福本千秋 撮影/花井智子 看板イラスト・デザイン/武田あゆみ)