アウトソースを受け入れられるかどうかも新ロールモデルの分かれ目

モモ 外的環境が整ってきたことで、お金を払って家事育児をアウトソースするかどうか、判断を迫られるという課題も出てきます。今のママたちは、ベビーシッターや家事のアウトソースを使ってもいいのかというところで、とても迷っています。日本人特有の真面目さや、母親たちが全部自分たちでやっていたという旧ロールモデルとの比較があるからでしょう。シッターやヘルパーを頼んでお金で時間を買うという欧米型の考え方にすぐスイッチできる人もいれば、反対に、そこにお金をかけるなら仕事を減らして家事育児は自分でやると思う人もいるでしょう

―― モモさんはどちらでしたか?

モモ 実は私も、最初はシッターさんやヘルパーさんに頼るのは白旗を上げることだと思っていたんです。でもそれではすべてのことが立ち行かないし…という葛藤が生後6カ月で初めて預け始めてからしばらくはありました。

―― 最近は白旗だとは思わなくなったのですね?

モモ はい。いざ白旗を上げたときにどんなリターンがあったかというと、シッターさんはプロなので、私よりはるかに上手に子どもの相手をするし、私にはない発想の遊びを教えてくれるんです。娘の成長について客観的な情報を得ることもできました。他人に見てもらうのは悪いことはない、娘にとってもメリットがあるし、親も気持ちが楽になって体の負担もなくなると気付きました。

 とはいえ、わが家は認可外園の保育料とシッター代で家計はカツカツです。明細を見るとため息が出ます。子どもが小さいうちが貯めどきだと聞いたりすると、ベビーシッターを使っている場合じゃないな、と思わず旧モデルに引き戻されそうになるときがあるんです。

西村 古いロールモデルは実績があるから、引力がありますよね。

モモ そう、引力。今していることが正しい選択か分からないという不安から、博打を打っている気分なのが私たち世代だと思います。

このやり方で子どもは幸せになれる? 妻も夫も不安を抱えている

―― そこでも夫婦間の話し合いがとても大切になりますね。ママもパパも不安や困難を吐き出すことをやったほうがいい。でも、吐き出せずに無理して頑張っている人もいると思います。

西村 僕の場合は去年の暮れあたりから今年の春くらいまで、仕事の不安感に襲われた時期がありました。家庭のことに限らず、仕事のことでも自分の悩みを吐露して、シェアし合うことは必要だと思います。その悩みにポンと解決策が来なかったとしても、シェアし合えるだけで、自分だけじゃないんだって救われることはあります。

 女性はママ友のような相談相手を作るのが男性より上手なので、そこで、家庭の中で大変なこと、夫のことを相談し合っていると思うんです。でも男性はパパ友みたいなものを作るのが苦手な人が多い。職場でも、家庭のこと、子育てのことは話しにくいですよね。パパたちは、子育てで悩んだとしても相談できる人がいないことのほうが圧倒的に多いんです。そこの違いは大きいです。

 今後、パパの家事育児が当然になってきたとき、パパだって、ママと同じように悩みがどんどん出てくるでしょう。ママにはグチを言い合えるママ友がいるけれど、パパはいない。となるとパパの方が抱え込みがちになって、結果、パタニティブルーになる危険もあると思います

モモ 現時点で家事育児に関しては、明らかに妻のほうが夫より大変です。夫もそのことが分かっているから、夫は妻には「俺も大変」とは吐き出せないんですよね。そこは同じパパ同士で慰め合わなければやっていられないでしょうね。私の夫も、一緒に頑張っているパパブログや、有名人パパの本を読んで、「そうそう」と頷いています。

パパが危ない! 相談の場を確保しよう

西村 これからは、父親こそ話し合ったり気軽に悩みを共有できるようなつながりが必要です。これが、これからのパパたちの課題ですね。ファザーリングジャパンでもその活動をしていますし、昨年立ち上げたパパコミュニティPtoCにもその役割があります。僕も大変な時期にPtoCの創設メンバーに支えてもらいました。

モモ 「誰かに頼れること」って大切ですよね。私たちの娘やその娘たち世代は、「おじいちゃんもおばあちゃんも働いていたね」という世代になるでしょう。今はその過渡期にいて、まったく新しい共働きのロールモデルを作るという使命があります。そのときに、大切なのが、古い価値観や日本人の真面目さ、責任感から自由になることです。その代わりに、誰かを頼ったり、少しくらい手を抜いたりして、今の時代にフィットしていくと、もっと軽やかに、子育てが楽しくなるのではないでしょうか。

次ページでは細川モモさんに、共働きで育った夫について詳しく聞いていきます。お母さんの働く姿が大好きだったという夫のエピソードは、愛情不足なのでは?という共働き子育ての不安を払しょくし、これからの子育てへのヒントを与えてくれました。