子育て世代を生かせるイクボスを増やしたい

―― これからはますます、夫と妻が戦友として協働するのが普通になっていくのでしょうか。

西村 男性たちの意識は確実に変わっていて、若い父親たちは、親である以上、男性も家事育児を妻とシェアし合って、子育てというプロジェクトを夫婦でやって行くものであるということが共通認識になりつつあると思います。今の流れが不可逆的で、流れが早くなっていくのは間違いないです。

 でも、家庭でも職場でも本当の意味で性別の分け隔てがなく、能力が同じなら同じくらい活躍できる社会にどのくらいのスピードで到達できるのかと考えると、一気には変わらないだろうと思います。それは、乗り越えられない壁がまだあるからです。上司、管理職、親世代のモノの考え方です。

 彼らからすると「子どもが生まれたんだから、残業頑張ってしっかり稼げよ」となってしまうんですよね。しかも、僕ら世代が「育児を頑張りながら、仕事も頑張る」みたいなことを言うと、「二兎を追うものを一兎をも得ずだろう」と言われてしまうような価値観を持っている。彼らがリタイアするのを待つとすると、あと10年、20年くらいはかかってしまうかなと思います。

―― でも、今の30~40代は間もなく中間管理職になっていきます。そこから変えることもできますよね。

西村 その通りです。僕らも10年も20年も座して待つわけにはいかないので、今いる管理職の方たちの意識を変えようと、イクボスに関する研修をやったりしています。これから人材不足の時代になると、子育て世代の社員の力を引き出しきらないと、組織として成果を出せなくなります。だから、管理職こそ育児に対する理解を持たなければということをずっと言ってきています。

 といっても、イクボス研修を受けた翌日から急に意識が芽生えるわけではありません。道のりは長いですが、2018年の現在と、5年後の2023年とでは、職場の景色が全然違うだろうなとは思っています

新しい母親像を受け入れられるママとそうでないママに分かれていく?

―― モモさんは女性として働いているなかで、どんなことが変わっていくと思いますか?

モモ 共働きや子育て世代を取り巻く社会制度が整って、シッター会社が増えるなどの外的環境が今急速に整ってきています。そうなると新しい母親像の波に飛び込んでいける人と、いけないママに分かれていくのではないでしょうか

 そのときに、私たちに迫られているのが、自分の中にある母親のロールモデルを変えていくことです。私たちの母親や祖母世代の多くは2代にわたって、外では仕事をしていませんでした。基本は家にいてごはんを作り、家族の世話をして、ミシンを踏んだり編み物をしたりしていた。私たちの中にある母親のロールモデルはそういう女性です。

 ところが、これから人生100年時代になっていく中で、子どもが親元にいる時間はあまりにも短期間です。子どもを生きがいにする時間はあっという間に終わります。自分たちの老後のためにも、自己実現の場はあったほうがいいんです。だから私たちは、スーツを着て仕事に行き、保育園に子どもを迎えに行きます。ワーキングマザーというロールモデルに、シフトチェンジをしなければならないんです。これをまったく抵抗なくできる人もいれば、難しい人もいるでしょう

―― 母親がしてくれたようなことをわが子にしてあげられない、という罪悪感も根強いですね。

モモ そうですよね。それに私たち世代は、自分がやっていることの成功モデルを見ていません。そのため、自分がやっている方法で本当に子どもは幸せに育つのかという漠然とした不安もあるんです。子どもにさびしい思いをさせていないか、発育発達に悪影響はないか、失敗するのではないかということです。