昭和タイプの父親は反面教師。自分は家事も育児もする父親になりたかった

―― 女性の労働力率を示すM字曲線という有名なグラフがあります。結婚、出産後に仕事をやめて子育てが落ち着いたら再開するのでM字になっていたのが、仕事を続ける女性が増えて、今、M字の底が浅くなってきています。それに伴って家庭内はどう変わってきたのでしょう。

西村 家事育児を夫婦で分担する家庭は確実に増えていると思います。うちの場合は、以前からフィフティーフィフティーです。それは、量ではなく、お互いの得意不得意で補完し合おうという考え方。僕は掃除と片づけが得意だけど妻は、そこはあまり、気にならないほう。でも料理は全然苦も無く作れちゃうタイプです。僕は料理は苦手なので、それがすごいと思う。見事に得意分野が分かれているんです。でも、娘が生まれたときは、入院中の1週間、僕が3食作りましたけどね。今も妻の体調が悪いときは、料理サイトを見ながら作ります。掃除、洗濯はできる範囲で僕がやっています。

―― 仕事がある普段の日から?

西村 そうです。僕の父親は保守的で、仕事はしっかりやっていましたが、家事も育児もまったくしない昭和タイプだったんです。僕の両親は僕が小6のときに離婚しているんですけれど、父親が原因で家庭がうまく回って行かなかったという体験があるから、僕は反面教師にできたと思います

モモ うちの夫もそうですね。その世代は皆さんそうかと思いますが、男は外で仕事、家庭は女が守るという家庭で、家のことは義母とおばあちゃんがやっていたそうです。義母もピアノの先生として仕事をしていたのですが、食べ盛りの男の子3人の母親でもあり、夫の目からみても両立ぶりが大変そうだったようです。主人も20代のときに実母をガンで亡くしましたので、親孝行できなかった後悔なども含めて、働く母親の力になりたい気持ちが強いようです。父親のロールモデルを自分の中で塗り替えられる点は、すごいなと尊敬しています。私の方がうまくできません(笑)。

育児の機会はプラチナチケットと言っても崩れないのが鉄壁夫

西村 ただ一方で、父親はひたすら仕事をし、家事育児を母親に丸投げしても平和に回っている家庭はたくさんありま すよね。そういう家庭で育つと、「自分の父は外で稼いできて家族を食わせていた。僕も家事育児する必要ないよね」と無意識に思ってしまう男性はいると思います。

―― 家事育児は女性の役割という考えが絶対に崩れない人ですね。日経DUALでも、以前、家事育児のワンオペ特集をやったときに「論破不可能の鉄壁夫」の存在が課題になったのですが、まさにそういったタイプですね。

西村 お父さんは威厳があって稼いでいる。だから妻には家庭に入ってほしいし、働いてもいいけど、家事育児はしっかりやってほしい、というね。

―― 西村さんは父親の子育てについての活動もしていますが、そういうタイプの方にはどんな働きかけをしているんですか?

西村 「北風と太陽」でいえば、太陽型のアプローチです。もちろん、「男は仕事・女は家庭」というのも一つの夫婦の形です。でも子育ての期間はあっという間。3歳のわが子の姿は今しか見られない。これから、小学生、中学生になり、次第に関わることもなくなったときに後悔するのは自分です。だから、期間限定の子育てを楽しむのは今しかないんです。「このプラチナチケットを失わないうちに、子どもと関わったほうがいいよ、そのほうが絶対に人生を後悔しないよ」と、子どもと過ごす楽しさを伝えています。

―― プラチナチケット! まさにそうですね。そういうと反応は?

西村 人間ってそんなに簡単には価値感が変わるものではないです。でも、何かしら印象的な体験をすると、変わるのではと思います。