2013年11月に創刊して以来、日経DUALは働くママ&パパに寄り添って情報を発信してきました。そして、晴れて創刊5周年を迎えます。「私たちが歩んできた道」はどのような道だったのでしょう。そして、「これから先、歩んでいく道」はどのような道なのでしょうか。今回はDUALの連載陣の1人でもあり、米国の共働き夫婦の在り方を研究した『稼ぐ妻・育てる夫』の著書を持つ治部れんげさんに、来年から約5年の間に、共働き夫婦を取り巻く環境がどのように変わっていくか伺いました。

【5周年記念号/私たちが歩んできた道、歩む道】
(1) ロールモデルなき新時代に突入するデュアラーたち
(2) 共働き世代が居場所と生き方を暗中模索した5年間
(3) 5年で働きやすさは増し、実力がものをいう社会に ←今回はココ
(4) 日比谷高校から海外大学選ぶ子も 目標は合格の先
(5) 共働きですから、そろそろ皆さん、男女平等で

共働きはさらに当たり前な存在に

 今後5年間で、共働き夫婦を取り巻く環境はどのように変わるのでしょうか。

 ジャーナリストの治部れんげさんは、「大前提として、共働きはさらに当たり前な存在になるでしょう」と断言します。

 「男女雇用機会均等法(1985年に制定)以前から、働き続ける女性の中には、『女性的な面はあえて見せないようにしなくては差別される』と考え、男性以上に努力して仕事をしてきたという方も多いでしょう。10年前に出産を経験した私と同世代の女性も、『産んだら辞める』という慣行が社内に残る中、厳しい保活を潜り抜け、時にはワンオペで家庭内を回しながら必死になってキャリアを継続してきた人が少なくありません。でも、これからは共働きがさらに当たり前になってくるため、『育休や時短などの制度を使うことが当然だ』と考える若手社員が増えるはずです

 「例えば最近のニュースでは、保育園の不承諾通知を手に入れて育休を延長するために、入ることができる可能性が限りなく低い、大人気の認可園1園だけに入園を申し込むケースもあると報道されています。こうした新しい現象は、私を含めた上の世代の働く親は、ちょっとびっくりするかもしれません。自分自身は認可園の枠を確保するために、月10万円払って認可外園に通ってポイントを稼ぐなどの苦労をしてきた人たちが、保活や両立について自分とは違う価値観を持つ後輩・部下を受け入れることができるでしょうか。また、例えば、入社の内定をもらって間もない学生から『妊娠したので入社を1年遅らせてもいいですか』と言われた場合、驚かずに対応できるでしょうか

 企業の人材育成に対する考え方も大幅に変化するでしょう、と治部さんは言います。

 「仕事が終わらない部下を夜中まで待ってくれたり、お説教をしながらも手取り足取り仕事を教え込んでくれたりする管理職は姿を消しているはずです。今や男性管理職も女性管理職も働き方改革・残業削減で部下を早く帰さなくてはいけないし、子育てや介護で管理職自身も忙しい。こういう状況では、育成を受けられる人とそうでない人の間に新しい格差が生まれるでしょう。教えがいがあり、飲み込みの早い若手であれば育成の機会も得られるでしょうが、コミュニケーション力不足だったり、やる気も実力もいまいちだったり、という若手は、知らないうちに管理職から敬遠されてしまうかもしれません。叱咤激励が部下・後輩からはパワハラと受け止められると取られてしまう可能性もあるため、上司や先輩にとって、指導や育成がリスクを伴うものになるからです」

 「企業における男女差別も徐々に解消していくでしょう。しかし、日本企業内の状況が、早々と米国企業レベルに到達するとは思えません」と治部さんは言います。

<次のページからの内容>
● いわゆる“女女格差”が開いていく
● 家事・育児をしないような場合は離婚するケースが多い
● 妻のワンオペでうまくいっているように見える夫婦の秘訣
● 「可愛い妻」問題とは
● 「日本の男女格差は異常だ」という感覚を取り戻して