「地頭が良いか悪いかは遺伝するの?」。親にとって、これはかなり気になる問題です。もし遺伝するとしたら、喜ぶ人がいる一方で、「それじゃ、うちの子はあまり希望が持てないなぁ」と申し訳なく思う人もいそうです。「同じクラスの優秀な○○ちゃんのところ、パパもママもお医者さんだと聞いた」「塾でトップの△△くんのパパは東大だったらしい」などという噂を聞くこともありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
「地頭がいい子を育てる暮らし方」特集の第3回では、分子生物学者で遺伝について多数の著書がある東大名誉教授・同志社大学特別客員教授の石浦章一先生に、「地頭って遺伝するの?」という素朴な疑問をはじめ、親のどのような点が頭の良さに影響するのか、お話を聞きました。
【地頭がいい子を育てる暮らし方 特集】
第1回 親野智可等 子どもの地頭を育てる「知識の杭」
第2回 茂木健一郎 「理三を目指すような子には育てるな」
第3回 地頭の良さは両親の遺伝子しだい? それとも環境? ←今回はココ!
第4回 地頭はOS デキる子がしているバージョンアップ法
第5回 4つのマジックワードで地頭をととのえよう
まずは、この問題。親子で地頭くらべをしてみよう
取材が始まるや「この問題、解けますか?」といたずらっぽい顔でこんな図を描き始めた石浦先生。「地頭と遺伝子の関係は?」という質問を投げかけたはずなのに、質問を質問で返されてしまうとは! 茶目っ気たっぷりな石浦先生に、筆者と編集部担当者はすっかり当惑してしまいました。はて。アリストテレスの輪のパラドックスと言われるこの問題、どこからとりかかったらよいのでしょう?
地頭の良さとは知識に基づいた応用力があるかどうか
すっかり考え込むわれわれ2人を前に、石浦先生はこんなふうにお話を始めました。
「まず、地頭が良いというのは、どういうことを指すのか考えてみましょう。地頭が良い=勉強ができるということなのでしょうか。いいえ。地頭が良いというのは、計算ができるとか定期テストの問題が解けるとか、そうした “勉強ができる”ということとは違います。全く知らない問題が出てきたときに解けるかどうか。つまり、“応用力がある”ということです」
応用力、つまり考える力ということですね。今までの“頭がいい”というイメージは、暗記が得意で知識がたくさんあるというイメージでした。今後、AIがますます進化していきますが、それに伴って「覚える」という勉強は不要になるのでしょうか? すると石浦先生は「いいえ」と首を振ります。
「応用力を育てるためにはやはり知識は必要です。知識があるというのは、勉強だけではなくて、色々なことを知っているということです。応用力は、それを組み合わせたりして使い、問題を解決する力ですね。新しいものを創り出すクリエーティブな力も、知識というベースがなければ生まれません」
なるほど、最初に先生が出した問題も、円周の求め方という知識に、内側の円は実際はどう動くかを考え合わせる応用力がなければ答えが出ません。まさに地頭力が問われる問題だというわけです。「読者の皆さんは、お子さんと一緒に取り組んで、親子の地頭力を試してみるのもいいですね。もしかしてお子さんが先に解いてしまうかもしれませんよ」。えっ、子どものほうが親より先に解いてしまう⁉ 親のメンツはさておき、地頭の面で、子どもが親を超えてくれるというのはうれしいことです。でも、そんなことがあるのでしょうか。地頭と遺伝にはどんな関係があるのでしょう。次のページから、本格的に聞いていきましょう。
※問題の答えは最後のページにあります。
● この子は何に興味があるのだろう、という目でわが子を見よう
● 幼児期からの教育が地頭の良さを左右する
● 興味を広げながら、努力できる子に育てよう