「地頭のいい子」と聞くと、どんな印象でしょうか。単に「頭がいい子」よりも、世の中を逞しく生きていけるような、真の能力があるような、そんな響きを感じませんか。

 でも「地」頭って何? と言われると、考えてしまいますよね。地頭がいいって何? 地頭って何歳で決まるの? 子どもの地頭をよく良くするためには、親は何をすればいいの? ――DUAL11月特集では、そんな地頭について考えていきます。

 特集第2回は、脳科学者の茂木健一郎さんが登場します。茂木さんこそ、地頭の良い人の代表のような方ですね。その茂木さんに、地頭が良い子を育てるヒントや茂木さん自身がどのように育てられたかをたっぷりお聞きしました。

【地頭がいい子を育てる暮らし方 特集】
第1回 親野智可等 子どもの地頭を育てる「知識の杭」
第2回 茂木健一郎 「理三を目指すような子には育てるな」 ←今回はココ!
第3回 地頭の良さは両親の遺伝子しだい? それとも環境?
第4回 地頭はOS デキる子がしているバージョンアップ法
第5回 4つのマジックワードで地頭をととのえよう

3人の「地頭が良い人」

 はじめまして。脳科学者の茂木健一郎です。

 日経DUALは共働きをしながらも、子どもの教育にも関心が高い読者が多いと聞きました。単に「テストの点が良くて勉強ができる」というよりも、「地頭の良い子」に育てたいという親御さんが多いようですね。日本のこれからを考えると、それは正しい判断です。そこで今日は、地頭が良いとはどういうことか、なぜ今、地頭の良さが必要なのかについてお話したいと思います。

 僕の近著『5歳までにやっておきたい 本当にかしこい脳の育て方』でも、最新の脳科学研究に基づいた子育て術や、最先端の教育法を紹介しています。地頭に関心のある方はこちらもおすすめです。

 それでは本題に入っていきましょう。

 まず、地頭が良いとはどういうことか。ここ数年、「あの人は地頭が良い」などと言ったり、言われたりすることが増えていますね。僕の周りにも地頭が良いなと思う人は何人もいます。その中で皆さんもご存知の方というと、ソフトバンクグループ代表の孫 正義さんやホリエモンこと堀江貴文さん、歌舞伎役者の市川海老蔵さんたちが思い浮かびます。

 皆さんはどう思われますか? 海老蔵さんは意外? いえいえ、海老蔵さんこそ本当に地頭の良い人です。

 彼に直接聞いたところ、学校時代は教科書をほとんど開いたことがないくらい、「勉強」はしていなかったそうです。しかし、彼は役者としての「勉強」となるとすごい。お芝居で今自分にとって「空海」が必要だと思うと、空海についてあらゆる角度から、色々な手段で勉強を始めるのです。しかも、空海に関わることが終わったとなると、すっぱり「もう興味ないです」と言える、潔いほどの切り替えの速さもある。その探求心、吸収力を見ていると、海老蔵さんはやはり地頭が良いと思います。というよりも歌舞伎界の天才ですね。

 ソフトバンクの孫 正義さんはここぞというときの判断力、リスクの取り方がとても賢明な方です。世の中の動きの先の先を読んで成功させる判断力はもちろんですが、皆さんにお伝えしたいのが、孫さんの少年時代の決断です。孫さんは九州の名門高校を1年の1学期で辞めて、アメリカへ留学しているのです。おそらく皆さんがお子さんを入れてみたいと思うような、名門校ですよ。そのままなら、いい大学、いい企業というルートがあったのに、そこに収まろうとしないで世界に出たのです。そのリスクを取ってでも、アメリカに行ったのは、高校1年生という若さで「自分が何をやりたいか」を把握できる俯瞰力があったからです。そこまでのビジョンを持ち、チャレンジを決めた決断力こそ、孫さんの地頭の良さの現れでしょう。

 堀江貴文さんの原点も高校時代にあります。彼は高校時代にコンピューターに熱中し、そのスキルによってインターネット時代に先駆けて、ウェブビジネスで成功しました。その成功の源泉である、誰も思いつかない発想や、常識にとらわれない言動には地頭の良さを感じさせます

<次のページからの内容>
● 地頭が良いとは「変化に適応できる」こと
● 何かに熱中する体験が地頭を良くする
● 蝶博士を目指した僕に母がしてくれたこと
● 「自分ならできる」と思える子に育てよう
● やりたいことが見つかった子の脳にはマップがある
● マップのゴールは「理三」より遠くであるべきだ!