人間が育っていくということ

── では最後に、今の子どもたちに、メッセージをいただけますか?

かこ 僕には、大きなことを言えないけれど、僕は子どもの応援団員として、ぜひ、自分で自分の力を、伸ばしていってほしいと思っています。

 大人や、他の人に頼るのもいいことです。これがよろしいなと思ったら、周りの大人やほかの人から、どんどん知識や情報を摂取する。けれども、「単に大人が言うから」「上の人が言うから」といって、それを鵜呑みにしているのでは、決して自分は伸びていかない。常に「本当かな?」と思う気持ちを持ってほしい。

 僕自身の経験では、子どもというのは物心がついたころ、小学校のころからもう、面と向かって言うことはなくても、「あ、この先生はなかなかいい点を引き出してくれる先生だ」「この先生は怒鳴るだけだな」「この先生からは色々学んでいこう」と、心の中では判断していくものだと思うんです。

 周りにいる大人、先生、あるいは親にしても、「こんな大人にはなりたくない」という大人はたくさんいるものです。「自分の親のここのところはいいけれど、ここのところはまずいよ」という判断力は、自分で伸ばしていかなければなりません

── 親にとっては耳の痛い話ですね…。

かこ 子どもさんというのは、単に親の言うことを聞いているだけでは、未来性はないんです。それをぜひ、子ども自身だけでなく、親御さんにも感じてもらいたいですね。

 それが人間が育っていくということなんだと。

 ただ受け身でいろんな知識を単に詰め込むというのでは、未来を切り開く力にはならない。「自力」、つまり自分の力を自分で鍛えて伸ばす。この精神と言いますか、心構えを失くしてしまったら、子どもの一人ひとりの未来性がなくなるし、世の中を鍛えていけなくなるのです。

 僕が言うことではないかもしれないけれど、これは、親御さんだけの問題でも、子どもさんだけの問題でもないと思います。このところを、教育の専門家にぜひ頑張ってほしい。

 僕の絵本を3代にわたって読んでいるという人がいて、ご苦労をされて今の生活をされているというお手紙をいただいたり、子どもさんからも感想をいただいたりしています。これはとてもありがたいですね。そんなことは夢にも思わず読んでいただければそれでいいと思って描いたものが、それぞれの立場で読んでくださって、それぞれの人生や生活に役立ってくれているのであれば、本当にこれ以上ありがたいことはないですね。

(構成/日経DUAL編集部 山田真弓)