学校での「まとめ学習」やプレゼン発表が苦手なわが子に、親はどうアドバイスをすればいいのでしょうか。慶応義塾大学総合政策学部教授の井庭崇さんに、「発表の型」について教えてもらいました。

【年齢別記事 高学年のママ・パパ向け】
(1)公立中に進学 高校受験に向け中1のスタートが大事
(2)高学年でプレゼン機会が急増 「型」を知っておこう ←今回はココ

 2020年度の学習指導要領の改訂で「探究学習」が導入され、小学校では教科を問わずに探究型の授業がどんどん取り入れられています。特に、小学校高学年になると、「どうしてこの工業地帯ではこの工業が発展したのか(社会)」、「平均を取ることのよさや、平均ではわからないことは何か(算数)」といったお題が出され、調べてまとめ、発表する「まとめ学習」が積極的に実施されるようになりました。また、運動会や学芸会、修学旅行といったイベントごとに、「どんなことがあったのか」「どんなことに気づいたか」をまとめ、プレゼン発表をすることは公立小学校でも珍しくはありません。

 ただし、伝えたいことをまとめて、人前で上手にプレゼンをする、というのは大人であってもハードルが高いもの。苦手意識を持つ子どもは少なくないはずです。慶応義塾大学総合政策学部教授の井庭崇さんは、「何かを人前で発表するには、高度な構成力が求められます。実は、プレゼンテーションをつくるという活動にも、『〇〇道』で言う『型』のようなものがあります。プレゼンがうまい人というのは、『どのようにまとめ』『どのように見せ』『どのように振る舞うとよいのか』の『型』を、意識的もしくは無意識的に踏まえて、プレゼンをつくり、実践しています」と言います。

 そのため、プレゼンづくりの「型」を知っておけば、プレゼンをつくることへのハードルを下げることができると言います。

 井庭さんは、大人や子ども向けに、プレゼンづくりの「型」の普及に努めています。実際に、井庭さんが提唱するプレゼンづくりの「型」を用いて修学旅行の学校発表会を行った都内の私立小6年のクラスでは、「子どもたちが型を認識することで、発表のゴールのイメージが持てるように」なったそうです。それ以外にも、以下のようなことがスムーズになったといいます。

・子どもたちが伝えたいテーマを絞ることができるようになり、準備がスムーズになった
・「型」に沿って考えられるので、子どもたち同士の意見交換が活発になった
・子どもたち自身で、プレゼン内容を軌道修正しながらつくり上げることができた

 さらに、もう一つメリットがあります。それは、「型」があることで、他の人や自分の実践における「振り返りの質を高めることができる」ということ。

 例えば、子どもたちがTED Talksなどで素晴らしいプレゼンテーションを聞いたとします。小学生だと、「この人のプレゼン、すごいね!」「かっこよかった」といった表面的な感想にとどまったり、スピーチの内容について言及したりするだけで終わりがちです。

 しかし、その素晴らしいプレゼンテーションを、プレゼンづくりの「型」に沿って分解をしていくことで、「手本を観察すること」の解像度が上がります。どんな点がよかったのかということが言語化できるようになるため、それを自分でも取り入れやすくなり、学びや成長につながりやすいと言います。

 では、プレゼンづくりの「型」とは、具体的にどのようなものでしょうか。次のページから具体的に紹介します。プレゼンに苦労するわが子をフォローする際に、この型に沿って教えていきましょう。