小学生の子どもたちはユーチューブ(YouTube)が大好きです。アニメ動画を見たり、ユーチューバーたちのゲーム実況や「やってみた」系の動画を楽しんだりする小学生は増えていて、「将来なりたい職業」上位にもユーチューバーがランクインしています。でも、1日中ユーチューブを見ている、知らないうちに投稿しようとしていた、など、子どもとユーチューブやネットの付き合い方に悩んでいるママ・パパも増えているかもしれません。

 ただ、ユーチューブなどのネットコンテンツは、これからの時代を生きる子どもたちにとって切っても切れない存在であることは確か。主に小学校高学年のママ・パパ向けとして、ユーチューブにまつわるトラブルと危険性、正しい付き合い方や視聴制限、そしてユーチューブに親しむことにより身に付く力などを、2本の記事で考えていきます。ITジャーナリストの高橋暁子さんと、子ども向けの教育プログラムを主催する株式会社ユニイク代表取締役の永井貴博さんに話を聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1)ユーチューブや動画投稿のトラブル、注意したいこと ←今回はココ
(2)ユーチューブで培われる「発信力」と「自己効力感」
(3)子どもを非行・犯罪に走らせない「アクセプター」とは
(4)反抗的な態度や性への興味は、犯罪につながる?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

危険な動画、有害な動画を見る例も

 ユーチューブにまつわる悩みやトラブルのうち、小学生や幼児に多いのは、だらだらと見続けてしまうこと。ITジャーナリストの高橋暁子さんは「放っておくとずっと見続けてしまうので心配、という保護者世代の話は多く聞きます。おすすめ動画が次々と表示され、タップしていけば簡単に見られてしまうため、中毒性が高くやめづらいのです」と指摘します。

 「平仮名が書けない幼児が音声検索をして見たい動画を見ていた、という例もあります。おもちゃで遊ぶときに、ユーチューバーのまねをして、『はい、今日はこのおもちゃで遊んでみたいと思います』と一人でぶつぶつ言っているという子どもも。子どもたちにユーチューブ動画が深く入り込んでいることの表れだと思います」

 子どもがタップしているうちに怖い動画が出てきたり、変な広告をタップしてしまって出会い系サイトにたどり着いてしまったり、ということもあるといいます。

個人情報流出に注意

 「視聴だけでなく、投稿にも危険性はあります。既にユーチューバーは飽和状態となっていて、思ったより再生数が稼げないため、注目を集めるために行動が過激化していくことがあります

 高橋さんによると、2017年9月には、警察官の前に覚醒剤に見せかけた白い粉を落とし追われる動画をユーチューブで公開していた男女が、偽計業務妨害罪で逮捕されている。また2017年6月、米ミネソタ州で、注目を集めたいと分厚い本を胸に当てた恋人を銃で射殺した女性もいた。女性は、ハードカバーの百科事典越しに撃てば貫通しないと思っていたという。つい先日も、メキシコで麻薬組織のボスをユーチューブで侮辱した少年が、殺害される事件も起こっている。

 小学生もユーチューブでトラブルを起こしている。「ある小学生ユーチューバーが動画内で偽の自宅住所を公開したところ、ウソとばれてしまい、視聴者に実際の自宅住所を特定されてしまった。この小学生の自宅住所や小学校などは、現在もインターネット上にさらされてしまっている状態です

 また別の小学生ユーチューバーはゲーム実況動画を公開していたが、違法ダウンロードしたことを明かして炎上状態に。個人情報を公開されたり、SNSアカウントを乗っ取られたりする羽目に陥ってしまった。「どれも、ユーチューブで目立ちたいという気持ちから、安易に配信してはならない内容を配信してしまった故のトラブルと言えます」

<次のページからの内容>
● 炎上や出会い系被害の危険性は
● リアルタイムの動画配信サービスに関わってしまうケースも
● 最初は「限定公開」がおすすめ
● ネットが逆に世界を狭めてしまうことも
● 情報を取っているつもりが、実は情報を取らされている